就職氷河期世代の支援

 「団塊ジュニア世代の多くが、団塊世代の親が手にしているものを手にしていない」。作家の雨宮処凛さんは、対談本「世代の痛み」の前書きでこう書く。例えば、正社員のいす、結婚、子育ての経験、ローンを組んで買った家…▲雨宮さん自身が40代半ばの団塊ジュニアの一人。この世代は高校や大学を卒業した時期がバブル崩壊後の景気低迷期と重なり、就職に苦労した。この後の30代半ばにかけての人々を含めて「就職氷河期世代」とも呼ばれる▲内定が得られず非正規の立場で働かざるを得なかった人や、正社員になれてもブラック企業で、酷使されて退職に追い込まれた人、引きこもってしまった人も少なくない▲所得が低いと社会保険料を十分払えず、高齢になって低年金や無年金で生活困窮に陥る可能性がある。将来の社会保障費の膨張を防ぐ狙いもあって、ようやく厚生労働省が支援に乗り出す▲この世代の就職や正社員化に向けて、ハローワークに専門窓口を設置したり、業界団体と連携して資格取得を支援したりする▲国が重い腰を上げたのは「人手不足の今なら企業にもメリットがある」との算段のようだが、遅すぎた感は否めない。それでも、雇用や収入が安定して、親世代が手にしたものの幾つかを手にするきっかけになればよいのだが。(泉)

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