社説:がんゲノム検査 遺伝情報守る法整備を

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 がん患者の遺伝子変異を調べ、最も効果的な薬を選ぶ「がんゲノム医療」の検査に、きょうから公的医療保険が適用される。

 保険が使えるのだから、今後、検査は多用されるのだろうが、その概要が、国民に十分理解されているとはいいにくい。

 検査の対象となるのは、血液がん以外のがん患者で、手術や抗がん剤による既存の治療が効かなかった人と、希少がん、小児がんなどの患者である。

 国立がん研究センターや米企業が開発し、厚生労働省が昨年、国内販売を承認したシステムを用い、100種類以上もの遺伝子を調べたうえで、専門家らが効果の見込める薬がないか、検討する。

 検査にかかる費用は56万円で、保険が適用されれば患者の負担は1~3割となる。月ごとに上限を設ける高額療養費制度を使うと、さらに軽減できる場合がある。

 がん治療の選択肢が増えることになるので、患者や家族にとっては朗報である。

 ただ、検査をしても、最適な薬が見つかるのは1~2割にとどまるとされる。このため、保険の適用を認めた中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)の会合では、「時期尚早ではないか」とする慎重な意見もあった。

 保険適用について国は、患者が同意した場合、検査で得られる大量の遺伝情報などを、国立がん研究センターに設けた「がんゲノム情報管理センター」に登録することを条件とした。

 京都大医学部付属病院はじめ、がんゲノム医療を提供する中核拠点病院や、連携病院から上がってくる遺伝情報は、新薬開発の原動力となる。国は、登録したデータをもとに、この分野で先行する欧米に対抗する方針という。

 これらの状況から、保険の適用開始は新薬開発に主眼を置いた動きではないか、とも思える。

 先月は、高額な白血病治療薬の保険適用が始まった。がんゲノム検査が続くこととなり、医療費のさらなる増大が心配される。

 忘れてならないのは、遺伝情報が個人情報として扱うべきものだということである。

 検査によって遺伝性の変異が見つかると、影響は家族にも及ぶ。遺伝情報をもとに、保険加入や雇用において患者への差別が生じることがあってはならず、そのための法整備も必要だ。

 こうした広範な課題を克服するには、国民の理解と合意が欠かせないといえよう。