インディカー第7戦詳報:運をつかみ寄せたニューガーデンが今季2勝目。琢磨は終盤の追い上げで連続3位

 デトロイト・ベルアイルパークで開催されたインディカー・シリーズ第7戦デトロイト。降雨により75分レースとなった決勝レースは、ジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)が勝利。

 佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は、2戦連続で3位を獲得した。

 午後3時40分のスタートを前に、デトロイトは3時頃から雨になった。大きな雷雲が接近、暫くすると強い降りになった。

 ダブルヘッダーの1戦が土曜日に開催できたのは、不幸中の幸いだった。午後5時過ぎにスタートの切られたレースは、70周で争われるはずが75分間のタイムレースに変更。スタート時の路面はウエット。全車がレインタイヤを装着して走り出した。

 ポールポジションからスタートしたアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)は、誰にもトップの座を脅かされることなく周回を重ねていった。スタートで3番手から2番手に上がったスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)との間にアタックができないだけの間隔を保ち続けた。

トップを快走するアレクサンダー・ロッシ

 18周目、エド・ジョーンズ(エド・カーペンター・レーシング)がタイヤウォールに突っ込んでフルコースコーションが発生。この直前にスリックタイヤに交換するためのピットストップをしていたジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)が大きな幸運に恵まれた。

 ロッシを先頭とする一団がピットに向かう中、彼ただひとりがステイアウト。ルーキーのフェリックス・ローゼンクヴィスト(チップ・ガナッシ・レーシング)にもパスされ、2番手スタートから4番手にまで順位を下げていた彼が、難なくトップに躍り出たのだ。

 ロッシも運に完全に見放されてはいなかった。彼の後ろを走っていたほぼ全員がピット。タイヤ交換と給油を終えてコースに戻ると、彼はニューガーデンの真後ろの2番手でレースに復帰できたのだ。

 しかし、イエロー多発で最終的に43周でゴールとなったレースで、ロッシはとうとうニューガーデンにアタックを仕掛けるところまでも行けず。プレッシャーをかけ続けてもニューガーデンはミスを冒さなかった。

 ドライコンディションでの両者は互角。前を走るチャンスをピットタイミングでつかんだニューガーデンは、そのアドバンテージをフルに活して今シーズン2勝目を手に入れた。

スキを見せない走りで今季2勝目を手に入れたジョセフ・ニューガーデン
ハンター-レイと競る佐藤琢磨

 3位佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)。1週前のインディ500と同じで、琢磨がレース終盤を大きく盛り上げた。

 予選9番手だった琢磨は、得意のウエットコンディションで次から次にライバル勢をパス。30周目にフェリックス・ローゼンクヴィストをパスして表彰台圏内に入った。

 更に前を目指した琢磨だったが、ロッシとニューガーデンはドライコンディションで彼より明確に速く、タイヤに熱が入ると差が一気に広がった。それでも、琢磨はローゼンクヴィストに逆転を許さなかった。考え尽くされた走りでアタックの可能性を潰し続け、ゴールまで3位の座を守り通した。

クルーと喜ぶニューガーデン。ランキングトップに返り咲く

「ピットタイミングが良かった。ドライコンディションとなって、トップに出てから、自分たちは強さを発揮できた」とニューガーデン。

 トップを手に入れるのに運の力を借りたが、それを最後まで手放さずに済んだのは、彼の高い実力、プレッシャーに負けない精神力、マシンの仕上がりの良さがあってのことだった。

「フルコースコーションのタイミングによって優勝のチャンスを奪われるのは今シーズン、もうこれで3回目だ」とロッシは悔しがり、「しかし、これはインディカーのレースの一部。こういうことが起こるのは織り込み済み」と続けた。やれることはすべてやり尽くした。表彰台での彼は、清々しい表情でニューガーデンと言葉を交わしていた。

 琢磨の2戦連続3位は素晴らしい結果だ。

「9番グリッドという理想とはほど遠い位置からスタートしました。今日の私たちは雨に助けられました。それは間違いありません。しかし、難しいコンディションで私たちは順位を上げていくことができました」

「ウエットでアタックし、ドライビングを楽しむことができました。ドライでのマシンは、トップ2との間に差があることを感じさせられましたが、いい走りができていたと思います。3位はチャンピオンシップを考えればいい結果」

「問題は、明日の予選と決勝で、今日より速く走るために、マシンにどのような変更を加えるべきなのか……というところです。今日はもうシャワーを浴びて休みたいところですが、エンジニアとマシンを良くするために長い話し合いをしなくてはならないでしょう」と琢磨は話した。

© 株式会社三栄