60歳、貯金3600万円。年金は全額、生活費や旅行に使いたい

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相談者は、定年を目前に控えた60歳の会社員男性。老後資金は準備しているものの、年金は生活費や旅行などで全額使ってしまって問題はないか不安を感じるといいます。

老後資金から自宅リフォーム代に1000万円も使っていい?

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、定年を目前に控えた60歳の会社員男性。老後資金は準備しているものの、年金は生活費や旅行などで全額使ってしまって問題はないか不安を感じるといいます。そんなヒロリッチさんのお悩みに、ファイナンシャル・プランナーの藤川太さんがアドバイスします。

相談者

ヒロリッチさん(仮名)

男性/会社員/60歳

関東/持ち家(一戸建て)

家族構成

妻(会社員・59歳)、子ども2人(長女:会社員20代、長男:大学4年生)、義母(90代)

相談内容

定年後は、妻も私も現在の職場で嘱託として働くつもりです。支出は光熱費、中でも電気料金が2万5000円~3万円と高いため、節電するよう家族に促しています。食費も約10万円かかっているため見直す必要があると考えていますが、現在は共働きのため仕方ないかなと思っています。通信費はスマホ4台と戸建用Wi-Fiで4万8000円ですが、家族でLINEを楽しんだり連絡用として利用しているため、欠かせません。

来年からは長女、新社会人となる長男からも5~8万円を貯金させて、20年は私が頑張って管理する予定です。相談内容は、年金は生活費、旅行などで全額使いたいと思います。20年後には家のリフォームで1000万円ほど見込んでいますが、現在の貯蓄で問題ないでしょうか?

家計収支データ

相談者「ヒロリッチ」さんの家計収支データ

家計収支データ補足

(1)住宅について

約20年前に戸建てを新築。ローン残高は98万円。固定資産税は年14万円。義母名義の土地、約50坪に戸建2軒が建っている。1軒は相談者の名義、もう1件は義母の名義。

(2)定年以降の働き方について

相談者:63歳まで現在の職場で嘱託として勤務。手取り17万円くらい、賞与なし。

妻:定年後は現在の職場で嘱託として勤務。手取り15万円くらい。

(3)自動車について

来年の保険料更新前に軽自動車へ乗り換え予定。

(4)保険について

【夫=支払合計金額 5000円】

生命共済=毎月の保険料5000円

【妻=支払合計金額 3万7000円】

積立利率変動型介護保障付終身保険=毎月の保険料7000円

無配当医療保険 終身型=毎月の保険料6000円

定期保険=毎月の保険料1万3000円

傷害保険=毎月の保険料4000円

ガン保険=毎月の保険料3000円

生命共済=毎月の保険料4000円

【長女と長男=支払合計金額8000円】

生命共済=毎月の保険料4000円×2人分

(5)ボーナスの使い道

家族での国内外旅行2回におよそ100万円。残りは全額貯金

(6)退職金について

相談者→100万円。受取済み確定拠出年金。現在の勤務先が掛金払い。

妻→受取予定額は200~300万円くらい

(7)年金受取額の見込みについて

相談者→230万円、妻→130万円程度(いずれも手取り)の見込み。

(8)義母について

戸建に一人で住んでいるが、相談者家族が毎日食事や掃除など身のまわりの世話をしている。介護が重くなったら、受給している共済年金月額20万円で特養へ入る予定。現在はデイサービスへ通っている。

(9)相続資産について

詳細は省略、5年ほど前に不動産会社に査定を依頼したところ、ある程度まとまった金額になりそう。相続税についても心配をしている。

ファイナンシャル・プランナー藤川太の4つのアドバイス

アドバイス1:貯蓄もあり収入面では問題なし。老後資金も心配なさそう

アドバイス2:支出管理の面では穴がある。特に固定費に問題あり

アドバイス3:お金の管理は家族であっても、それぞれに行うのが基本ルール

アドバイス4:相続税がかかるなら、当然、対策はしたほうがいい

アドバイス1:貯蓄もあり収入面では問題なし。老後資金も心配なさそう

現在の貯蓄が3600万円、これにヒロリッチさんと奥様の退職金を加えた約4000万円が、年金以外の老後資金ということになります。住宅ローンも完済間近のようですし、お子さんも長女の方はすでに社会人、長男の方も今春は大学を卒業ですから教育費の必要もありません。ということは、この4000万円は住宅のリフォームや車の買い替え、介護費用といった老後資金として使えるお金ということになります。

定年から年金の支給開始までの収入が問題になることが多いのですが、ヒロリッチさんはその点についてもよく調べていらっしゃいます。特別支給の老齢厚生年金が支給されるまではご夫婦ともに嘱託として働き、63歳後半から年金が全額支給される65歳までは不足する10万円を貯蓄から引き出して生活する計画。これが実行できれば取り崩す金額はご夫婦の退職金額を下回りますから、現在の貯蓄を減らす心配もありません。

65歳以降は、共働きだったこともあり、ご夫婦の年金額は手取りで360万円程度とのこと。計画通り、定年後の毎月の支出を31~32万円にダウンサイズできれば、老後資金を生活費として取り崩す必要はほぼなさそう。ということは、自宅のリフォーム代に1000万円をかけても問題ないといえます。

アドバイス2:支出管理の面では穴がある。特に固定費に問題あり

収入面についてはきちんと管理されていますが、支出面では意外に穴があるようです。しかも、それが固定費。固定費は歳をとってもずっと続くものなので、きちんと管理しないと貯蓄を取り崩すことにもなりかねませんから注意が必要です。では、具体的に見ていきましょう。

まずは、通信費。家族のコミュニケーションツールとして欠かせないとのことですが、それにしても高すぎます。格安SIMや格安スマホを使うなど少し工夫をすれば、半額程度にすることは難しくないはず。ちなみに、我が家のスマホは全員通信量6GB/月の契約ですが4人で1万円強です。

次に、光熱費。ヒロリッチさん自身も自覚されているようですが、家族の人数が多いとはいえ高いです。電力やガスの小売り自由化は電気代、ガス代が高い家庭ほどメリットがありますから、お住まいの地域で利用できる事業者のプランやサービスを調べてみてください。使用量が変わらなくても、年間で2~3万円程度は削減できるはずです。

もうひとつが保険料。見直し予定とのことですが、正直いって、すべてやめてしまっても構わないくらいです。というのは、大きな病気になっても貯蓄から医療費を支払うことは可能ですし、万が一のことがあっても生活に困る家族はいないからです。お守りとして加入しておきたいと考えるならば、保険料の払込みが済んだもの(もうじき済むもの含む)や共済だけ残せばいいでしょう。

ただし貯蓄性の高いものについては、解約返戻金額をきちんと確認し、解約するのがいいかを判断してください。お子さんの共済についても、社会人なのですから本人が加入し、保険料もそれぞれが払うようにしましょう。日額5000円の終身医療保険ならば、毎月の保険料は2000円程度です。

現在の支出が月55万3000円。定年後は住宅ローンがなくなるなど、何もしなくても少なくなります。しかし30万円程度にダウンサイズするためには、一度しっかり見直しをすることをおすすめします。

アドバイス3:お金の管理は家族であっても、それぞれに行うのが基本ルール

相談内容などのコメントを拝見していて、とても気になったことがあります。確かにヒロリッチさんはいろいろなことを調べてしっかり家計を管理していらっしゃると思いますが、ご家族、特にお子さんたちは本当に納得されているのでしょうか。

親の役目としては、お金のことも含めて自立を促すのが基本です。お金の使い方をアドバイスしたり、同居を続けるならば生活費を受け取り、強制的に積み立てをするのは構いません。しかし、あくまで自分の収入は自分で管理し、自立して生活をする力をつけてもらうのが基本です。

お義母さまの年金も同様。デイサービスの費用や生活費以外は、お義母さま名義の銀行口座で管理するようにしてください。

アドバイス4:相続税がかかるなら、当然、対策はしたほうがいい

相続税についても心配をされているとのこと。

相続税対策の必要の有無は相続税がかかるか否かに大きく関係します。「5年ほど前に大手不動産会社に査定を依頼したところ、売却した場合はまとまった金額になりそう」とのことですが、相続税法上の評価額とは大きく異なります。売却する場合の取引価格と相続税路線価は異なり、一般的に相続税路線価は取引価格の8割程度といわれます。さらに、自宅として使用している宅地ですから「小規模宅地等の特例」が使えると大きく減額されます。もしも、相続税の納税が不安であれば、不動産以外の資産も含めて、一度、税理士に試算してもらうといいでしょう。

相談者「ヒロリッチ」さんから寄せられた感想

先生からきめ細かいアドバイスいただきとても参考になりました。もっと良くなるように家族で将来の生活設計を見直します。

教えてくれたのは……藤川太さん

All About「資産運用」ガイド。「家計の見直し相談センター」で10年以上にわたり1万5000世帯を超える家計の見直しを行ってきたFP。資産運用、家計管理、マイホーム購入、不動産投資などに詳しく「普通の人」でもお金を貯める・増やせるようになる方法をアドバイスしています。

取材・文/鈴木弥生

(文:あるじゃん 編集部)