超激戦のMotoGPイタリアGP、ペトルッチがマルケスを0.043秒差で抑え初優勝。中上は自己ベストの5位獲得

 MotoGP第6戦イタリアGP MotoGPクラスの決勝がムジェロ・サーキットで行われ、ダニロ・ペトルッチ(ミッション・ウィノウ・ドゥカティ)が自身初優勝を飾った。中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)は5位フィニッシュを果たし、自己ベストリザルトを獲得している。

 気温29度、路面温度49度、ドライコンディションで決勝レースは始まった。順調にスタートを切ったポールポジションスタートのマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)とは対照的に、2番手スタートのファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)はオープニングラップで大きくポジションを落とす。

 6番グリッドだったカル・クラッチロー(LCRホンダ・カストロール)も好スタートを切りオープニングラップ序盤で2番手につけるが、その後、ドゥカティ勢に交わされてしまう。代わって2番手に浮上してきたのはアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ミッション・ウィノウ・ドゥカティ)、そしてジャック・ミラー(プラマック・レーシング)だ。中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)も好スタートを切り、オープニングラップを6番手で終えている。

 2周目を終えるころには、アレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)が13番手からポジションを大きく上げてきていた。リンスは3周目にファステストをマークし、さらに4周目にはペトルッチを交わして3番手に浮上。ただ、5周目に入るメインストレートでペトルッチ、ミラーのドゥカティ勢の加速により交わされ、さらにクラッチローにもオーバーテイクを許し5番手にポジションを落とす。

 6周目、2番手にポジションを上げていたペトルッチがトップのマルケスに勝負を仕掛けた。このバトルに乗じてドヴィツィオーゾ、さらにミラーもトップをねらう。レースをリードしていたものの、2番手以下に大きな溝を開けることができずにいたマルケスはあっという間に後方に飲み込まれ、一時は5番手にまでポジションを落とす。

トップ集団は数珠つなぎとなり激しい攻防が繰り広げられた

 トップ争いはさながらMoto3クラスのような激しい接近戦となった。ドヴィツィオーゾ、ペトルッチ、ミラー、マルケス、リンス、クラッチローが絡み合い、すきをうかがい合う。ムジェロ・サーキットの長いホームストレートを利用した加速で、1コーナー飛び込みでは何度も複数台が横並びになるシーンが繰り広げられた。

 このときポジションを上げてトップ集団につけていたスズキのリンスは、一時はトップを走行する奮闘を続けていた。しかし、長いメインストレートの加速でドゥカティ勢、ホンダのマルケスに度々交わされる。リンスはこのあともトップ集団で周回を重ねるが、次第にその集団内の後方につけることが多くなっていった。

 12周目、3番手を走行していたマルケスは自己ベストを記録。そのままメインストレートでドヴィツィオーゾを交わし、2番手に浮上する。このとき先頭を走っていたのはペトルッチ。その差は約0.3秒だ。

 レースが残り10周となるころには、息つく暇もないほどの激しいポジション争いはいったんの落ち着きを見せ始めた。トップを走るのはペトルッチ、2番手はマルケス、3番手はドヴィツィオーゾ、4番手がリンス、5番手にミラー。ここまでが先頭集団で、依然としてそれぞれの差はわずかだ。そして5番手のミラーの約3秒後方の6番手に、中上がつけていた。

15周目には6番手にポジションを上げていた中上

■最終ラップ1コーナーのコーナリングで意地を見せたペトルッチ

 16周目、5番手を走行中のミラーがスリップダウン。ミラーはそのままリタイアを喫している。これにより、中上は4番手にリンスに続き、5番手に浮上した。

 残り6周を終えたメインストレートの加速からの1コーナーのブレーキングで、3番手走行中だったドヴィツィオーゾがマルケスをオーバーテイクし、2番手に浮上。ミッション・ウィノウ・ドゥカティがワン・ツー体制を築く。

 ドヴィツィオーゾはその翌周の1コーナーでペトルッチを交わすと、ついにトップを奪取。しかしペトルッチも譲らない。ペトルッチはドヴィツィオーゾのインに飛び込んでオーバーテイク。ミッション・ウィノウ・ドゥカティのチームメイト同士による、激しいポジション争いが展開される。

 そんなふたりを、約0.15秒後方で追うマルケス。4番手のリンスは、このころになるとトップ3から大きく後れをとることはなかったものの、ポジション争いに加わることはなくなっていた。優勝争いはペトルッチとドヴィツィオーゾ、マルケスの3人にしぼられることになる。

レース終盤、優勝争いはペトルッチ、マルケス、ドヴィツィオーゾの3人にしぼられた

 最終ラップ、1コーナーに先頭で飛び込んだのはマルケスだった。マルケスを追うように2番手につけたのはドヴィツィオーゾ。しかし、ペトルッチがコーナリングスピードでふたりを交わす。先頭に立ったペトルッチをマルケスが追従するがオーバーテイクには至らない。

 最終コーナーをトップで立ち上がるペトルッチ。残るはメインストレートの勝負だ。

 僅差のまま、ペトルッチのドゥカティ デスモセディチGP19がメインストレートを加速していく。そのペトルッチをマルケスのホンダRC213Vがスリップストリームを利用して追う。しかし最初にチェッカーフラッグを受けたのは、ペトルッチだった。

 最後までもつれた超接近戦を制したペトルッチ。MotoGPにおける自身初優勝であり、ドゥカティにとっても、ペトルッチ本人にとっても、母国で飾った勝利となった。2位にはマルケスが入り、トップのペトルッチとの差はわずか0.043秒だった。3位はドヴィツィオーゾで、ミッション・ウィノウ・ドゥカティが表彰台の2席を占めた。

マルケスの追随を振り切り、トップでチェッカーを受けたペトルッチ

 4位はリンスで、13番手から実に9つもポジションを上げ、一時は優勝争いをも展開するポテンシャルを見せている。

 そして、見事5位に入ったのは中上。中上にとって自己ベストリザルトとなり、インディペンデントチームライダーのトップとしてこのイタリアGPを締めくくった。

 2番グリッドからスタートしたクアルタラロはスタートでポジションを落とし、10位フィニッシュ。母国グランプリだったバレンティーノ・ロッシ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)は7周目の4コーナーで転倒を喫し、リタイアで終えている。

自身初優勝を飾ったペトルッチ。パルクフェルメでは涙を見せるシーンも
5位フィニッシュの中上はインディペンデントチームライダーとしてもトップ。パルクフェルメでマルケスと喜びを分かち合う

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