危険な外来生物「ヒアリ」はその後どうなっている?

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黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に、昆虫学者で農学博士の五箇公一が出演。昆虫学者になった経緯について語った。

黒木)今週のゲストは昆虫学者で農学博士の五箇公一さんです。博士でいらっしゃるのですが、昆虫学者で農学博士とは一体どういった研究をしているのですか?

五箇)大学のときは葉っぱに着くダニ、ハダニと言うのですが、害虫のダニを研究していました。その後は民間会社に勤務して、葉っぱに着いたダニをやっつける殺虫剤を作ることに7年間ほど従事しました。その後、国立環境研究所という研究所に転職しまして、いまは虫を含めて生き物を守る仕事をしています。

黒木)まったく相反する仕事に。それはご自分で選んで、その仕事に進路を変えられたのですか?

五箇)最初の仕事は、農作物を守る為に必要とされる薬剤を、できるだけ安全で効果のあるものを作るということで、有意義でやりがいを感じていました。しかしバブルの時期に就職したので、それが弾けたあと、会社を含めてどんどん景気が悪くなってしまいました。このままではいけないと思いながら仕事をしていたのですが、そのうちに自分の作った薬が、ダニたちが対抗性をつけて効かなくなったのですね。会社ですから、それを内緒で開発しなければいけない、売らなくてはいけない。科学は正しく伝えることが大事なのですが、会社だと特許や秘密にしなければいけない部分が多く、自由に研究成果が発信できないのです。やはり、きちんと科学を発信できる仕事につかなくてはいけないと一念発起して、博士号を取得しました。論文を書いて博士号を取得して、いまの研究所に転職しました。

黒木)いまは生き物を守る。

五箇)守る方に立っています。人間社会と生き物たちの世界、そういったものをいかに自然共生して行くか。

黒木)害虫で思い出しましたけれど、ヒアリという虫が日本に入って来ましたが、もともと日本にはいなかったものですよね。あれはどうなったのですか?

五箇)2017年の夏に、神戸港で最初に見つかって大騒ぎになりました。皆さんもニュースで見たと思いますが、多くの人が初めてヒアリという外来種の存在を知りました。でも1年経って去年(2018年)、ぱったりニュースにもならなくなってしまった。皆さん、いなくなったと勘違いしていますが、実はずっと輸入は続いているのです。

黒木)いるのですか?

五箇)います。コンテナに乗っかって、貨物に紛れて、主に中国から。

黒木)いままで日本に居なかったものですよね。

五箇)外来種としてどんどんやって来て、環境省としては港で見つけ次第、退治することで上陸を何とか阻止している状態です。これがいつまで続くかと言うと、これからも世界に増え続けて行きますから、輸入大国である日本は今後もヒアリが輸入される確率が上がり続けます。いずれ上陸して巣を作る恐れもあるということで、我々としてもそれを警戒して研究しているところです。

黒木)ヒアリは日本でも生きて行けるということですか?

五箇)基本的には熱帯のブラジルやアマゾンなど、暑いところにいるアリなので日本では住めないだろうと言われていたのですが、虫はけっこうタフなので、住むところは彼らが見つけるのです。

黒木)容姿は普通のアリと違うのですか?

五箇)基本的には1匹~2匹並べても、全く区別がつきません。そこが非常に難しいところです。国立環境研究所としては、対策としてエサを置いておいて、集まったアリを全部まとめてすり潰し、アリのDNAのミクスを作りました。そのDNAミクスにヒアリにだけ反応する試薬を入れて、60℃で60分間温める。ヒアリがそこに1匹でもいれば白く濁る、という検出キットを作りました。5月から全国の希望する機関に無料で配布することになっています。それが濁らなければいないということになりますから、むやみに慌てる必要はないし、万が一濁れば我々専門家がそこに派遣されて、集中的に探せばヒアリの巣が見つかるだろうということです。

黒木)知識を知って、むやみに怖がらないということですね。

五箇)むやみに怖がらないでいただきたいけれど、油断もしないでいただきたい。でも皆さん、ヒアリの存在そのものをお忘れになっている。

五箇公一/国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター室長、ダニ学者、農学博士、保全生態学者

■1965年生まれ。富山県出身。
■京都大学卒業後、宇部興産に入社し、農薬の開発研究に従事。
■1996年に国立環境研究所に入所。外来生物や農薬による生態リスク研究を展開している。
■国立研究所の研究者であることとロックファッションのギャップが注目され、テレビ番組などのメディアにも出演。
■著書に『クワガタムシが語る生物多様性』、『終わりなき侵略者との闘い』。共著に『ダニの生物学』『外来種ハンドブック』『感染症の生態学』などがある。

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