高齢者「ごみ出せない」 長崎・斜面地のステーション 市は改善模索 不燃・資源・プラ、設置不十分 

ごみステーションに向かうため階段道を下る高齢女性=長崎市内

 「坂の町」といわれる長崎市で、住民のごみ出しを巡り、斜面都市ならではといえる課題が生じている。運搬方法やスペースの問題で、可燃以外の不燃、資源、プラスチックのごみステーションを設置できない場所があり、離れた場所まで行かないと、これらのごみを出せない住民がいるためだ。斜面地に暮らす高齢者からは「ごみが出せない」と不満が漏れる。
 「年齢を重ねるにつれて膝が悪くなって、下り道は特に足が痛い」
 5月28日、長崎市立山1丁目。資源ごみ袋を手にした豊崎豊子さん(87)がこぼした。自宅から最寄りのステーションまでは約200メートルの距離がある。「転んだら大変だから」とつえ代わりの日傘を手に、細い階段道の上り下りを繰り返す。「1人暮らしで少量とはいえ、ごみは必ず出る。もうちょっと近くにあればね…」
 市廃棄物対策課によると、2018年9月時点のごみステーション数は、可燃1万359カ所に対し、不燃・資源・プラスチックは6656カ所にとどまる。総排出量の約8割を占める可燃は斜面地対策として「引き出し収集」を採用。底にキャスターやそりが付いた「引き出しかご」にごみ袋を積み、担当者が徒歩で収集車まで運び出す。市街地の約7割が斜面地である長崎ならではの「先進事例」(同課)として定着している。
 だが、不燃など3種は一般的に可燃に比べてごみの体積が大きく、ステーションの確保場所や運搬経路に一定の広さが必要だ。金属類やガラスなど運搬中に落下すると危険な物が含まれていることもあり、引き出し収集はしていない。近くに3種のステーションがなく、遠くまでごみ出しを余儀なくされている市民は多い。
 細道や階段が多い西山1丁目自治会地区。高齢者らが最寄りの可燃ステーションに不燃などのごみを捨てており、代わりに自治会員が別のステーションに運び出すことも少なくない。高木紀明自治会長(64)は「自治会の負担も大きい。(可燃以外のステーションが)増えるに越したことはない」と語る。
 同課によると、自治会や個人から昨年7月までに、ステーション新設の要望が約30件届いている。片淵、小島、銭座地区など斜面地の住宅密集地が目立つという。要望を受け、市は可燃ステーション2カ所を新設したが、可燃以外はゼロだった。
 市も手をこまねいているわけではない。02年開始の「ふれあい訪問収集」では、65歳以上の高齢者や身体障害者らを対象に無料の戸別収集を実施。18年8月時点で2272世帯が登録済みだ。
 長崎市の高齢化率は上昇傾向が続き、今年4月末時点で31.7%に達した。同課は「人員に限りがあり、ステーション新設や引き出し収集の拡充は現実的に難しい。道の拡幅などのハード面の整備にも限界がある」とする。「高齢化は今後ますます進む。地域や福祉団体などと協力する形でソフト面の改善も行い、負担を少しでも減らす必要がある」と模索を続けていく考えだ。

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