「遺構残る確度高い」 整備方針に疑問の声 長崎県庁跡地考えるシンポジウム

パネル討論で県庁跡地の歴史的価値について議論する登壇者=長崎市築町、メルカつきまち

 16世紀の長崎開港以来、重要施設が置かれてきた県庁跡地(長崎市江戸町)の歴史的価値を考えるシンポジウムが2日、長崎市内であり、約350人の聴衆を前に県内外の専門家が意見を交わした。同跡地については、県や市が文化芸術ホールなどの整備方針を示している。専門家からは、埋蔵文化財の詳細が確認できていないのに建設を検討することへの疑問の声や、貴重な遺跡が壊されかねないとの懸念の声が上がった。
 同跡地には、江戸幕府の禁教令以前のキリスト教の重要拠点「岬の教会」や、幕府の長崎奉行所西役所などが置かれていた。シンポジウムは、学識者やカトリック関係者、市民有志らで5月に発足した長崎県庁跡地遺構を考える会(共同代表・片峰茂前長崎大学長ら4人)が主催。講演やパネル討論などがあった。
 日本考古学協会(東京)は、参加した近藤英夫副会長(東海大名誉教授)らが同跡地の整備検討について問題提起。過去に本格的調査がされていない旧県庁舎本館地下について、県は遺構が残る可能性が低いとみているが、近藤氏は「建物が建っている状態で(遺構がないと)言い切れるのか。遺構が残っている確度は高く、綿密な調査をしてほしい」と訴えた。
 パネル討論で野上建紀長崎大教授(近世考古学)は、旧庁舎解体が進む現状を踏まえ「解体工事は、気を付けないと(遺跡が)壊れてしまう。450年残っている遺跡が壊されるかもしれないと、危機感を持たなければならない」と指摘。
 考える会共同代表の1人で、国立歴史民俗博物館(千葉県)の久留島浩館長も登壇。世界文化遺産の構成資産を含む長崎の文化財について「市民が、どう残すか覚悟を決めて取り組んでほしい」と呼び掛けた。

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