石木ダム 補償額11.8億円 長崎県、収用裁決書を受理

裁決内容について説明する長崎県職員=県庁

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、県収用委員会が反対地権者13世帯の宅地を含む未買収地約12万平方メートルの明け渡しを求めた裁決について、長崎県は3日、県収用委の裁決書を同日受理したとして、明け渡し期限や総額約11億8千万円の損失補償額など裁決の内容を明らかにした。地権者らが明け渡しを拒否していることについて、中村法道知事は報道陣に「円満な解決に至らず残念。(家屋の撤去や住民の排除など)行政代執行の手法を除外することは考えていない。あらゆる選択肢の中から総合的に判断する」と述べた。

 長崎県庁で会見した県河川課によると、反対地権者の家屋13世帯や公民館1軒、小屋1軒を含む約12万平方メートルの明け渡しを地権者らに求める裁決を、県収用委(弁護士ら委員7人)が5月21日付で出した。同事業で宅地を含む明け渡し裁決が出たのは初めて。

 裁決書に示された損失補償額は総額約11億8千万円で、地権者数は支援者ら“一坪地主”を含め計376人。地権者からの土地の権利取得の時期は9月19日とした。県は同日までに地権者に補償金を支払うか、地権者が受け取らない場合は法務局に供託することで、土地の所有権が国に移ることになる。県収用委への県の裁決申請では、権利取得の時期は「裁決の翌日から60日」だったが、県収用委は対象が膨大だとして「120日」に延期した。

 明け渡し期限は、家屋などの物件がない土地が9月19日、物件がある土地が11月18日。地権者が期限までに明け渡しに応じなければ、長崎県と佐世保市は知事に行政代執行を請求でき、知事が対応を判断することになる。

 会見した県土木部の天野俊男次長は「(県収用委には)丁寧、慎重に審査いただいた。地権者に丁寧に説明する努力は継続する」とした。佐世保市の朝長則男市長は「(ダム建設は)市の水源不足解消に必要不可欠。今後も事業推進に取り組む」とのコメントを発表した。

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