原爆死没者名簿 筆耕始まる 被爆2世の森田さん  3500人の生きた証し残す

原爆死没者の冥福を祈り、筆を進める森田さん=長崎市役所

 長崎原爆の日の平和祈念式典で奉安する原爆死没者名簿に、昨年8月1日以降に新たに判明した原爆死没者の名前と享年、命日を記す筆耕作業が3日、長崎市役所で始まった。作業は8月2日まで。例年と変わらない約3500人分の筆耕を見込んでいる。

 名簿は原爆死没者の生きていた証しを残し、恒久平和を祈念しようと市が1968年から作成。昨年度までに奉安した死没者数は17万9284人(うち広島原爆の被爆者58人)に上る。昨年度からは国が定める被爆地域外で原爆に遭った「被爆体験者」なども遺族らの自己申告に基づいて記載しており、昨年度は68人の名前を書き込んだ。

 筆耕者は被爆2世で書道講師の森田孝子さん(71)=同市葉山2丁目=が18年連続で担当する。一昨年まで2人体制だったが、昨年度から森田さんが1人で担っている。

 森田さんは「年を重ねるごとに被爆者の高齢化を感じており、一人一人ができる形で原爆の恐怖や平和の尊さを語り継がないといけない。死没者の冥福を心から祈り、筆耕を続けたい」と話し、一文字ずつ丁寧に筆を進めた。1日に約150人分を書き込むという。

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