蓄電池内部の電流密度分布の画像診断システム、神戸大学などが開発

株式会社Integral Geometry Scienceと神戸大学は、磁場に関する「逆問題」の解析を通じて、磁場の空間分布を測定して電流密度分布をリアルタイム・非破壊に画像診断するシステムの開発に世界で初めて成功した。蓄電池の安全性が飛躍的に向上することが期待される。

蓄電池は良品として出荷されても発火事故などが生じることがあり、原因解明と防止策が必要とされる。出荷時の蓄電池内部の電流密度は空間的に不均一であり、その度合が蓄電池の充放電により次第に大きくなり、最終的には短絡・発火の恐れがある。そのため、出荷前の蓄電池の電流密度分布を非破壊で精密に計測する技術が求められていた。

今回開発した技術では、電流が流れる際に周囲に発生する磁場の空間分布を測定することにより、蓄電池内部の電流密度分布を測定する。これまでは、電流密度分布から磁場の空間分布を数学的に導出すること(順問題)は可能だったが、磁場の空間分布から電流密度分布の導出(逆問題)は非常に困難で実現していなかった。

正極負極間の距離が電池の電極サイズに比べて無限に小さく、蓄電池内に流れる3次元的な電流は、薄い平行平板間に閉じ込められていると考えられる。今回、これを蓄電池の静磁場の基礎方程式に取り入れ、この逆問題を世界で初めて解析的に解くことに成功。さらに、磁場空間分布を新開発装置で測定し、逆問題を解析して非破壊で電流密度分布を映像化するシステム「FOCUS」を開発した。

この技術は良品の蓄電池でも電流密度のムラを検出できる。将来的には電動車両が普及して蓄電池生産量が増大するとみられ、蓄電池の製造工程で全数検査が確立されれば、蓄電池の安全性向上への大きな貢献が期待される。

参考:【新エネルギー・産業技術総合開発機構】世界初、蓄電池内部の電流密度分布の画像診断システムを開発

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