長崎市が遺族に被爆者手帳 本人死亡、初の交付

 長崎市は4日、被爆者健康手帳の交付を巡る差し戻し審の長崎地裁判決で入市被爆が認められた故上戸滿行さんの遺族に、「失効済」と押印した被爆者健康手帳を手渡した。被爆者本人が死亡しているため効力のある手帳は交付できないが、「被爆者と認められた証しとして仏壇に供えたい」という遺族の希望に応えた。

 市によると、被爆者の死後に返却された失効済みの手帳を希望した遺族の元に返した事例はあるが、死亡した人を被爆者と認めて新しい手帳を渡すのは初めて。

 遺族宅には市原爆被爆対策部援護課の篠崎桂子課長ら2人が訪問。健康管理手当の支給に関する手続きなどを説明し、遺族と意見交換した。関係者によると、謝罪を含む田上富久市長のメッセージなどはなかったという。

 上戸さんは2008年、市に手帳交付と健康管理手当支給を申請したが、いずれも却下された。その後、国が指定する地域の外で長崎原爆に遭った「被爆体験者」の集団訴訟に加わり、訴訟中の11年に81歳で死去した。長崎地裁は5月14日、最高裁の差し戻しを受けた判決で上戸さんの入市被爆を認定し、市の処分を取り消した。原告、被告ともに控訴せず、29日に判決が確定した。

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