実の娘を性的虐待した父親に名古屋地裁岡崎支部が無罪判決を言い渡すなど、3月以降に相次いだ性暴力に関する無罪判決に抗議する「フラワーデモ」が全国に広がっている。4月に東京、大阪で始まり、3度目は6月11日、全国9カ所で開かれる予定だ。参加者は色とりどりの花を持って集まる。被害者に寄り添う気持ちを表す「#WithYou」と書かれたプラカードを携える人も。若者の参加も多い。デモが盛り上がる理由は何か。
デモの呼び掛け人によると、6月11日の各会場の開始時間と場所は以下の通り(5日現在の予定)。
【札幌】19時、大通西3丁目
【仙台】19時、勾当台公園市民広場
【東京】19時、行幸通り
【名古屋】19時、久屋大通公園 希望の広場噴水前
【大阪】19時、なにわ橋1番出口 中央公会堂向かい
【神戸】19時、東遊園地北側 芝生広場
【山口】19時、下関駅東口 下関大丸前
【福岡】19時、警固公園
【鹿児島】18時、鹿児島中央駅東口広場
▽広がる怒りの矛先
「無罪判決が続いた恐ろしさに、いてもたってもいられずに集まる人が多い」。
呼び掛け人の一人で、作家の北原みのりさんはそう話す。情報はツイッターで拡散され、これまでのデモには北原さんらの予想を大きく上回る人が集まった。
参加者が訴える怒りは、裁判所に対してだけではない。被害者の心に追い打ちをかける二次被害にも向いている。
「あなたにも落ち度がある」。傷ついた心を踏みにじる、社会のこころない声は、これまでも声を上げようとする被害者を押さえつけてきた。
さらに、明治時代に制定された刑法は、改正によって性犯罪に対する厳罰化が進んでいるとされる一方、被害を訴えた人を守れないままになっているとの批判は大きく、強い憤りの声があがっている。
デモでは、性的虐待や痴漢、セクハラなど、自分や周りの人に起きた性被害を語る人もいる。高校生など若者もマイクを握り、自らの経験を語っている。北原さんは「性暴力や性差別への怒りを言葉にする場が求められていたと感じる」と話す。
▽花を贈る優しさをデモに添えて
「フラワーデモ」と名付けた理由を北原さんに尋ねると、こんな話をしてくれた。
北原さんが取材で訪れた韓国で、性暴力を告発する動き「#MeToo」の急速な広がりを目の当たりにした。運動が活発化した背景には、声を上げた被害者に対して「あなたに起きたことは私の問題でもある。あなたを信じる」と支持する多くの女性の声があった。
日本でも、被害者に寄り添っていることを何らかの形で表現できないか。思い浮かんだのは、人に花を贈る時の優しい気持ちだ。被害を訴える人に「あなたの話を聞く」と語りかけるようでぴったりだと思い、参加者が花を持参する「フラワーデモ」を提案した。
5月下旬には、性暴力に詳しい弁護士を招き、都内で「性暴力と刑法を学ぶワークショップ」を開いた。なぜ無罪判決が相次いだのか、2017年に改正された刑法に課題はないのか、あるとすれば何かを考えた。
デモは、改正刑法の見直し検討の時期に当たる来年まで続けたいという。6月11日は福岡がメイン会場に、7月は名古屋がメイン会場になる予定だ。(共同通信社会部=小川美沙)
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