寿司職人のいる列車

改造を受けたキハ40。色がなんだかトワイライトエクスプレスっぽい?

 近年、何かと話題の観光列車。「移動」より「乗ること」自体を目的とし、技巧を凝らした車内内装や地元食材を用いた食事サービスなど、普通の列車に比べるとちょっと贅沢な時間が味わえると人気だ。筆者が勤務する北陸周辺にも、2015年の北陸新幹線金沢開業にあわせ、3つの観光列車が登場した。今回はそのうちのひとつ「べるもんた」に乗ろうといざ富山へ。

 この列車、正式には「ベル・モンターニュ・エ・メール」といい、フランス語で「美しい山と海」との意味だそう。週末を中心に、高岡駅(富山県高岡市)から延びるいわゆる「盲腸線」の城端(じょうはな)線と氷見線のどちらかで運転される。今回は高岡から氷見まで乗車した。全席指定の快速列車のため、乗車には座席指定券が必要になる。

 車両はかねてから高岡周辺で活躍していたキハ40型を改造。車体は深い緑をベースにゴールドのラインなどが施され、高級感ある装いだ。車内は木目基調で、窓枠を額縁のようなつくりとすることで、車窓に映る立山連峰や日本海の景色を絵画として見ているように思える工夫がなされている。

 だがこの列車の最大の魅力は、車内で振る舞われる地物を使った食事・お酒だろう。事前申し込みが必要だが、地酒飲み比べセットや、酒とおつまみ、寿司などが選べる。今回は奮発して2000円(税込み)の「ぷち富山湾鮨セット」を予約した。

 乗車すると指定された席の机には、すでにお箸やお茶が置かれていた。ほどなくしてお寿司が到着。車内を見渡すと、運転席後ろには割烹着を着た寿司職人が。回らないお寿司屋さんのカウンターでよく見る(?)、寿司ネタが入っている冷蔵用のガラスケースまで完備されており、なかなか本格的。寿司職人が乗っている観光列車は珍しいのでは。

(上)運転席を背に寿司を握ってくださる職人さん、(下)車内で食べる本格寿司はまた違ったお味

 列車が高岡駅を発車すると、地元の方による観光案内も始まり、車内はとても賑やかに。キハ40のディーゼルエンジンの音を聞きながら、寿司をつまむのも悪くない。しばらく走ると車窓右側には日本海が広がり、有名な雨晴海岸沿いで列車は一旦停止。乗客による景色撮影タイムとなった。訪れた日はあいにくの雨だったが、天気が良ければ立山連峰が望めるという。

 高岡からおよそ30分で、終点の氷見に到着。折り返しの高岡方面行き列車は、予約ですでにいっぱいだったので、1時間ほど待って普通列車で高岡へ戻った。寿司を傍らに行くローカル線の旅、なかなか「新鮮」な体験だった。もちろん、寿司ネタも。

 2023年ごろには北陸新幹線が敦賀まで延伸し、筆者が勤務する福井にも新幹線がやってくる。それに合わせて何か新しい観光列車が登場するのか、期待したいところだ。

 ☆加志村拓(かしむら・ひろし)1992年生まれ。共同通信社・福井支局記者。好きな寿司ネタはハマチとエンガワです。福井では鯖寿司もおすすめですよ。

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