<レスリング>【2019年関東高校大会・特集】田南部魁星(千葉・日体大柏)が2連覇達成 今年こそ全国制覇だ!

(文・撮影=増渕由気子)

2連覇を達成し満面の笑みを浮かべる田南部魁星(千葉・日体大柏)

 全国制覇に向けて視界良好の2連覇だ! 関東高校大会の男子フリースタイル51kg級は田南部魁星(千葉・日体大柏)が決勝で志村優充(栃木・足利大付)を1分21秒、テクニカルフォール勝ちで、2年生ながら大会を連覇した。

 男子フリースタイルで争われる学校対抗戦で、日体大柏は2位の花咲徳栄(埼玉)に15点の差をつける圧勝で4連覇を成し遂げ、田南部のV2は団体優勝の原動力となった。田南部は「団体優勝のため、関東大会は絶対に勝たないといけないと思っていた」と並々ならぬ気合をいれて臨み、結果的に団体と個人とダブル優勝を飾ったことでホッとした表情を浮かべた。

 V2と言っても、個人戦で“優勝”したのが昨年の同大会以来、1年ぶりのこと。一昨年、全国中学生選手権でV2を達成して最優秀選手賞を受賞した田南部は、1年生だった昨年も全国での活躍が期待された。しかし、JOC杯と同大会を優勝した後、インターハイは5位に終わり、国体と今年3月の全国高校選抜は2位。あと一歩で高校タイトルを逃していた。

大澤監督から教わった言葉「得意淡然失意泰然」で再起

 連覇を狙った今年のJOC杯は体調不良で欠場。全中MVPの肩書以上の活躍ができずにもどかしい日々が続いていた。田南部は「試合時間も中学時代より長くなったことで、後半に構えが浮いてしまったりしていました。試合でも練習でやってきたことが高校生になって出せなくなり、なかなか勝てませんでした。高校生の壁は高かったです。もっと勝てると思っていた」と悔しそうに振り返った。

得意のスタンドからバックポイントを奪いに行く田南部

 ショックだったのは今年3月の全国高校選抜大会だ。同い年の選手に敗れて2位。同世代に圧勝だった中学時代のままの力関係とはいかず、思い悩んだ。

 再起のきっかけとなったのは、大澤監督がミーティングでしばしば用いた「得意淡然失意泰然」という言葉だった。-うまくいってるときにはおごらず、慎ましい態度でいること。うまくいかないときは、焦らずに落ち着き前向きになること-。田南部は、「自分に当てはまった言葉でした。(全中王者だったという)おごりがあった」と自分を見つめ直して再起を図った。

 自分を変えるために田南部は、普段の生活や食事などから改善した。「見直したら、お菓子やジュースを取る量が増えていたので、それを少なくして、自分の体にプラスになるタンパク質を多く摂取するなど食生活を切り替えました」。今では体脂肪が落ち、体質改善が実感できるようになってきたそうだ。

関東大会で勝ってもおごらず、インターハイは挑戦者として挑む

 全国高校選抜大会2位、JOC杯は棄権と“失意”を味わった田南部は、昨年優勝しているこの大会を制することで悪い流れを変えたい気持ちが強かった。2回戦の向田旭登(埼玉・花咲徳栄)戦では4-4のラストポイントで競り勝つなど、まだ本調子とは言えない部分もあったが、調子が悪くても、決勝ではスタンドからグラウンドの連続攻撃がうまく決まってトーナメントを勝ち抜き再び関東王者に。

決勝戦ではグラウンド技も決まってテクニカルフォール勝ちを決めた

 だが田南部は「今回の優勝でおごることなく、挑戦者という気持ちで駄目だったところを直さないとインターハイは優勝できない」と反省点を洗い出していた。「スタンドからの攻撃を中心に練習しているので、それを出し切って、インターハイで優勝したいです」。

 1つ年下の全中MVPの髙橋海大(東京・帝京)が60kg級で優勝したことにも、田南部は刺激を受けていた。「すごいと思う。自分も頑張らなくちゃ」。全中MVPの選手は、常に当時の栄冠と現在を比較される宿命を持つ。そのプレッシャーを力に変えて、今年こそ“全国高校チャンピオン”の座に輝けるか!?

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