ラグビー日本代表ユニフォーム提供のカンタベリー、ラグジャー出荷を15倍に

 

 ラグビーファンが心待ちにする4年に1度の「ラグビーワールドカップ」日本大会が9月20日、開幕する。
前回のイングランド大会では、日本が優勝候補の南アフリカに歴史的勝利をあげ、世界中に“ジャイアントキリング”と衝撃が駆け巡った。
 今大会でも活躍が期待されるラグビー日本代表のユニフォーム(桜ジャージ)を1997年から提供しているのが、(株)カンタベリーオブニュージーランドジャパン(TSR企業コード:293789096、新宿区、以下カンタベリー)だ。
 東京商工リサーチ(TSR)は、ラグビーブームを支えるカンタベリーの領家正章取締役に話を聞いた。

ラグビージャージ(ラグジャー)の「CCC」

 「高校ラグビー全国大会では、7割がカンタベリーのヘッドギアを使っている」と領家取締役は、カンタベリーのブランド力に自信をみせる。カンタベリーの象徴である「CCC」のロゴは、ニュージーランドの国鳥「キウイ」をかたどっている。3重の補強ステッチ、ラバーボタン、ループネックなどが特徴だ。
9月20日から日本国内12会場で開催される「ラグビーワールドカップ2019」。カンタベリーは、7月に新しい日本代表の桜ジャージを発表する。

カンタベリー「CCC」のロゴ(カンタベリー提供)

カンタベリー「CCC」のロゴ(カンタベリー提供)

カンタベリーの歴史と今

 カンタベリーの歴史は、1904年創業のレーン・ウォーカー・ラドキン社に始まる。頑丈なジャージが評判を呼び、1924年にニュージーランド代表チーム(愛称・オールブラックス)のジャージを手がけるようになった。激しくぶつかり合うラグビーの試合では、強度や耐久性が重要になる。
 日本のカンタベリーのスタートは1985年、オールブラックスの初来日まで遡る。1994年に、日本ラグビーの聖地である秩父宮ラグビー場近くの青山に直営店をオープン。1997年に日本代表チームのオフィシャルサプライヤー契約を結んだ。
 それから日本代表の「桜ジャージ」と言えば、「カンタベリー」と知られるようになった。
 とはいえ、すべてが順風満帆だったわけではない。関連会社が青山店の2階でラグビーの文化でもあるビールを提供する飲食店を始めたが、これが躓いた。
1999年に再スタートし、2002年に(株)ゴールドウイン(TSR企業コード:590017411、富山県)の100%子会社となった。
 「ゴールドウイングループの支援もあって品質をゴールドウイン基準に引き上げた。運営は現場に任され、カンタベリーの歴史は脈々と引き継がれている」(領家取締役)。

日本代表の桜ジャージ2015年大会(TSR撮影)

ラグビーワールドカップとともに

 日本代表は、ラグビーワールドカップへ1987年の第1回から出場している。
 戦績は2011年ニュージーランド大会まで、1勝21敗2分。世界にまるで歯が立たなかった。南アフリカ大会(1995年)のニュージーランド戦では17対145と歴史的な大敗を喫した。
 国内ラグビーは、テレビドラマ「スクール・ウォーズ」世代のオールドファンが中心で、カンタベリーブランドも認知度が低かった。
 日本が満を持して臨んだ2015年のイングランド大会では、優勝候補の南アフリカに歴史的な勝利をあげた。その勢いに乗り、サモア、アメリカにも勝利した。決勝トーナメントこそ進めなかったが、これまで1勝しかできなかったワールドカップで3勝をあげた。この歴史的な快挙で一躍、日本ラグビーが注目され、国内ではラグビーブームが起きた。
 これまでラグビーは、毎年12月に開かれる大学対抗戦の早明戦、そして正月に開催される大学選手権決勝だけが国立競技場を満員にした。かつて大学選手権決勝は晴れ着を着た女性も多く詰めかけたが、若者のラグビー人気は潮を引くように覚めていった。好きな人だけが楽しむラグビーも、イングランド大会で大きく潮目が変わった。 ラグビー界がこぞって取り組んだ強化策も実り、国内ではトップリーグの底上げに加え、「サンウルブズ」がスーパーラグビーに参戦。多くの国内選手が世界の強豪チームとの対戦で経験を積んでいる。
 カンタベリーは、トップリーグでは東芝など5チーム、スーパーラグビーの「サンウルブズ」にジャージも提供。国内ラグビーの底辺拡大と成長をともに歩んでいる。 「ブランド価値を日本ラグビーとともに高め、スポールカジュアルとの相乗効果を狙っている」と領家取締役はビジョンを語る。

ラグビーワールドカップ日本大会に向けて

 カンタベリーは2015年3月期まで、売上高は25億円前後で推移していた。だが、2015年のイングランド大会で日本代表が大活躍した効果などから、2016年3月期の売上高は30億円を突破した。
 2020年3月期は日本大会を前に、日本代表ジャージの生産数を前回大会の15倍に増やす。その勢いに乗り、売上高も「50億円台を目指す」(領家取締役)。 7月に発表予定の日本代表の新ジャージは、ゴールドウインの研究開発施設も動員。これまでの不足部分を補うジャージを開発した。「新ジャージの発表では、これまでの単なるデザインの発表だけでなく、前回大会の仕様との違いや機能についてもしっかりと説明する」(領家取締役)という。
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 カンタベリーには、「ワールドカップ日本大会」は一つの山に過ぎない。その後も、2020年の「東京五輪・パラリンピック」、その翌年の「ワールドマスターズゲームズ2021関西」、と国内でラグビーの世界的な大会が目白押しだ。
 領家取締役は、「ラグビー協会の努力で女性客も増え、わかりやすいルール説明などの効果も出ている」と、さらに市場拡大を狙う。
 日本代表が強豪国相手にスクラムやタックル、そしてトライを量産するたびに「CCC」のロゴも飛躍するワールドカップは目前だ。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年6月7日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)

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