6月7日付

 20年近く前、西都市の銀鏡神楽を見に行った。冬の夜、かがり火がたかれる中で奉納された勇壮な舞に圧倒された。夜が白々と明けるころには、まさに神が降臨するかのような雰囲気に包まれ、人生初の夜神楽の情景は今でも心に強く刻まれている。一方、日南市の伊比井神社であった伊比井神楽の奉納。こちらは、五穀豊穣(ほうじょう)を願って日中に舞う春神楽。境内に集まった住民はシートを敷いて、弁当を広げながらゆったりと見物。盛り上がってくると、舞い手が観客の顔に墨を塗って回ったり、観客も神楽場に飛び入りしたりして、笑顔があふれ、終始にぎやかだった。趣も伝統も異なる二つの神楽のことを考えながら、多種多様な神楽に出合える本県の魅力をあらためて感じた。

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