WEC:「ル・マンはこれまでの集大成」。トヨタ、記録ずくめのシーズンを経て連覇かかる最終戦へ

 WEC世界耐久選手権に参戦しているTOYOTA GAZOO Racingは6月12~16日、フランス、サルト・サーキットで開催されるシーズン最終戦『第87回ル・マン24時間レース』で大会2連覇の達成に挑む。

“スーパーシーズン”と呼ばれる、2018年5月から2019年6月まで13カ月に及ぶロングシーズンを戦ってきたトヨタにとって、まもなく迎える第8戦ル・マンは前年の初優勝に続く連覇のかかる大会であると同時に、7号車と8号車、2台のトヨタTS050ハイブリッドを操るドライバーたちの間で争われているドライバーズタイトルが確定する場でもある。

 今季、これまで7戦を終えた時点で、トヨタは6勝を挙げそのうち5回のワン・ツー・フィニッシュを飾っている。そのなかでセバスチャン・ブエミ、中嶋一貴、フェルナンド・アロンソ組8号車は第2戦ル・マンを含む4勝をマーク。総得点を160点とし、マイク・コンウェイ、小林可夢偉、ホセ-マリア・ロペス組を31ポイントリードしてランキングトップに立っている。

 しかし、ル・マンではポールポジション獲得と決勝の優勝で最大39ポイントが獲得可能であることから、7号車のドライバーたちにもまだ逆転戴冠のチャンスが残されている状況だ。一方でスーパーシーズンにおけるチームチャンピオンは、第7戦を終えた段階でライバルのプライベーター勢に対するポイント差を61まで広げたことから、トヨタが最終戦を前に2014年以来、2度目のシリーズチャンピオンを確定させている。

 そんなトヨタが走らせるTS050ハイブリッドは前回のル・マンから今戦までが同一シーズンであることから、レギュレーションによって大幅な変更は許されず。初優勝を飾った2018年のローダウンフォース仕様とほぼ同じパッケージで第87回大会に臨むことになる。しかし、トヨタでは第2戦以降のこの1年間、セットアップの微調整や戦略についてつねに改善が図られてきたという。

「ル・マン24時間レースは、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)にとってWECスーパーシーズンの最終戦と言うだけではなく、これまでの戦いの集大成です」と語るのは、TGRの村田久武チーム代表。

TOYOTA GAZOO Racingno7号車トヨタTS050ハイブリッド
2018/19年WEC第8戦ル・マンを最後にトヨタを離れるフェルナンド・アロンソ

「我々はシーズン中、2019年のル・マンのために多大な努力を重ねてきました。ル・マンではあらゆることが起こり得ます」

「サーキットは独特で、レースは本当に長く天候も刻々と変わっていきます。もちろんライバルたちも軽視できません。ル・マンは誰にとっても本当に試練の場なのです」

 そう語る村田氏だが、連覇への自信は充分にあるようだ。「我々は強いチームスピリットを持ってトレーニングし、万全な準備をしてきました。ですので、ル・マン連覇に向けての準備は整っていると信じています。ファンのみなさまにワクワクするレースをお届けしたいと思っています」

■アロンソ「2019年は初勝利というプレッシャーから解放されることで、少しはレースが楽しめるのではないかな」

 村田氏と同様に、準備が整い今のところ順調だというブエミは「長年トヨタとともに戦ってきただけに、昨年ル・マンに勝てた意義は本当に大きかった。ついに勝利を勝ち取れたときの達成感は素晴らしいものだった」とコメント。

 そのブエミとともに8号車トヨタをドライブする一貴は「24時間レースは本当にタフで、完走するだけでも多くの困難が待ち受けており、勝つのはさらに難しいです。だからこそ、このル・マンというレースは特別で、僕たちが挑戦し続ける理由でもあります」とル・マンに挑む意義を説明する。

「昨年ル・マンで勝てたことは、もちろん僕のキャリアにとってもっとも重要な勝利ではありますが、それ以上に30年以上にわたって挑戦し続けてきたトヨタにとって本当に大きな勝利でした。再び勝つためには、まだまだ最大限の努力を続けて行かなくてはなりません」と兜の緒を締め直した。

 今戦がトヨタでのラストレースとなるアロンソは、ル・マンについて次のように述べる。

「ル・マンはシーズンカレンダーの中でもっとも厳しいレースだ。2018年に勝てたことは僕にとって、とても大きな意味があった。初めての挑戦だったが夢が叶ったのだらね。特別な一日となり、夢のような瞬間だったよ」

「表彰台で、ホームストレートからピットレーンまで人が溢れているのを見た時、ハードワークが報われたとともに、チームが本当に誇らしく感じたんだ」

「幸運にも、今年は初勝利というプレッシャーから解放される。だから少しはレースが楽しめるのではないかな。もちろん、そのなかでも全力でつねにチャレンジし続けるよ」

■「今年こそ7号車での優勝を叶えるべく全力を尽くす」と小林可夢偉

ル・マン初優勝と逆転戴冠を目指す小林可夢偉
ル・マン連覇を狙う中嶋一貴

 アロンソが言うように初優勝へのプレッシャから開放され、ドライバーズポイント的にも余裕を持った8号車組以上に闘志を燃やすのは7号車を駆る可夢偉だ。

「ル・マンに到着すると、誰もが何か特別なものを感じます。僕はモータースポーツの世界に入って長いですが、この雰囲気と、このサーキットを走る体験にはいつも驚かされます」

「ル・マン24時間は年に1度しか開催されないので、レーシングドライバーとしてのキャリアのなかで勝つチャンスは限られます」

「我々は過去3年間に渡って勝てるクルマを持っていたにもかかわらず、それは叶わず、未だにル・マンでの勝利を夢で追い続けています。今年こそ7号車でその夢を叶えるべく全力を尽くします」

 僚友のロペスもまた「この1年間、僕たちにとってもっとも重要なレースであるル・マンをずっと夢見て、努力を続けてきた」とコメント。

 同じマシンをシェアするコンウェイは「ル・マンは我々にとって最大の目標となる特別なレースで、トヨタTS050ハイブリッドはこのレースを戦うために設計されている。ル・マンでこそ真の速さを実感できるんだ」と述べ、「今シーズン最後のレースを最高の位置で終えられることを願っているよ」と続けている。

 トヨタが日本メーカー初の連覇を目指す2019年のル・マン24時間は、9~10日の車検を終えると12日から走行が開始され、以後フリープラクティス、予選1回目、2回目、3回目とウォームアップ走行が続いていく。その後迎える決勝は15日15時(日本時間22時)にスタートが切られ、翌日の15時まで24時間に渡る長く厳しい戦いが繰り広げられていく。

ドライバー交代練習を行うホセ-マリア・ロペスとマイク・コンウェイ
TOYOTA GAZOO Racingno8号車トヨタTS050ハイブリッド

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