被爆者手帳申請却下「違法」 85歳女性、長崎市を提訴

 長崎原爆が投下された翌日に入市被爆したのに、長崎市が「確認できる資料がない」として被爆者健康手帳の交付申請を却下したのは違法として、同市の女性(85)が7日までに、却下処分の取り消しや70万円の国家賠償を請求する訴訟を長崎地裁に起こした。提訴は6日付。

 訴状によると、原告女性は1945年8月9日の原爆投下時、西彼三和町為石の親戚宅に疎開していた。10日に稲佐町1丁目の自宅の片付けをするため母と姉、兄と爆心地から2キロ以内に入ったとしている。

 女性は今年3月、手帳交付と健康管理手当の認定を市に申請したが、いずれも5月に却下された。申請時には、証人として原爆投下翌日に八千代町付近で会ったという男性の証言も提出したが、市は「証人が10日に入市した事実が確認できない」として認めなかったという。

 被爆者健康手帳の交付を巡る訴訟では、長崎地裁が今年1月と5月、明確な物証や証人がなくても本人の証言内容を重視して被爆者と認める判決を出し、いずれも市が控訴せずに確定した。訴えでは「市は相次ぐ敗訴判決で審査のあり方の見直しが求められる状況なのに、十分に精査せずに漫然と申請を却下したのは違法」と指摘している。

 市は「訴状が届いていないのでコメントできない」としている。

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