放射能汚染土の新処理技術を早稲田大学が開発、高圧洗浄技術でコスト3分の1に

早稲田大学の松方正彦教授らの研究グループは、高圧洗浄技術を応用した新しい放射能汚染土の処理(減容化)技術の開発に成功した。放射能汚染地域の除染作業で出た除染土の中間貯蔵推進への貢献が期待される。

福島第一原子力発電所事故後、放射能汚染土の除染作業から発生する除染土は現在2千万立法メートル以上と推計される。しかし、従来の放射能汚染土処理方法は、熱エネルギーや化学薬品を多く使用して経済性が低く、大量の汚染土壌を処理できる技術開発が待たれていた。

今回開発した技術では、装置のパイプ内部(直径50mm程度)に土壌を吸引し、高圧噴流で発生する乱流により土壌洗浄を行う。高圧洗浄により解砕された汚染土は、後段に設けた分級・分離処理を経て、放射性セシウムを吸着している粘土鉱物を選択的に回収し、洗浄土と濃縮土に分けた後に脱水処理する。

現地(神奈川、福島)試験では、森林由来粘性土を主体とする汚染土壌(放射性物質濃度7500~4万1700 Bq(ベクレル)/kg)を対象とした。その結果、洗浄処理後のふるい回収土の放射性物質濃度(2200~5200Bq/kg、平均3800Bq/kg)は、元の土壌の18~29 %(平均24%)に低下。土壌回収率は46~74%(平均63%)となった。

また、回収土の放射性物質濃度は概ね5000Bq/kg以下となり、十分な地盤強度であるため建設盛土材等に再利用可能と分かり、現地試験では良好な効果と有効性を確認。さらに、処理コストは先行技術の15~35%と試算している。

今後は、粘性土の解砕効果を向上させ、放射性物質濃度の低減、分級・分離技術の最適化による減容化率の向上を目指すという。また、土壌有機物のキャラタリゼーション(特性評価)と、その効率的な分離処理法の開発も課題としている。

参考:【早稲田大学】高圧洗浄技術を応用した新しい放射能汚染土減容化技術の開発に成功

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