雨の弱 「シネマコンプレックス」 - "ボク"を演じ続ける"ボク"の物語

“ボク”を演じ続ける“ボク”の物語

『みんな映画を観ないね』『誰も我々を覚えていない』。映画「楽日」で大雨の日に閉館を迎えた劇場、最後の上映を観終えた出演者がそう言葉を交わした。

雨ノ弱の1枚目となるこのアルバムは雨で始まり、雨で終わる。1つ1つの楽曲が物語として進行していく事から名付けられた今作。ウィスパーなボーカルと美しいピアノの対比が特徴的であるが、物語の主人公である“ボク”は本物の“ボク”を隠すようにそれぞれの楽曲で表情を変える。そして全曲を通してみられるダークさはそれを加速させるように纏わりつき、今作自体が1つの物語であるという事を確信に変える。

それはそれぞれの楽曲が脈を打ち、アルバムそのものが命を持っているという事であり、今作が永遠に“ボク”に命を与え続け、“ボク”を演させる続ける映画館なのであるのだと感じた。しかし“ボク”を殺すのも生かすのもあなた次第、物語は観客が居なければ命を持つことは無いのだから。(新宿LOFT:小林駿仁)

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