大気や土壌、水質を測定し分析 西部環境調査 佐世保から世界へ 工業会企業の「技術力」・11

さまざまな場所で採取された水質を測定し分析する作業=佐世保市三川内新町、西部環境調査

 大気や土、水、生態系、音、地上を覆う人工の建築物…。いわば“地球”と向き合っている。
 1980年2月に、発電所の立地場所の環境測定を主な業務として創業した。環境計量証明事業と、環境・建設コンサルティングを柱にしている。環境計量証明は、工場のばい煙や排水に含まれる有害物質の濃度に加え、工場内の振動などが人体に与える影響を測定して分析。第三者に示す。
 コンサルティングは、事業が与える影響を予測し、対策を考える。九州新幹線長崎ルート建設に伴う騒音調査や、浦上ダム(長崎市)の生息調査、九十九島(佐世保市)の魚礁効果確認を担った。下の原ダム(同市)のかさ上げでは、野鳥の生息環境を守るためドングリの植え替えに携わった。
 「強みをつくるため、環境分野に力を入れてきた」。山本利典代表取締役社長(61)は語る。大気測定車は4台、騒音測定器は20台を所有。いずれも九州のコンサルティング会社で最も多い。九州で唯一海洋課をつくり、専門の技術者を置いている。県内の企業と共同で気象や魚類を無人観測する海洋浮体式タワーを開発し、五島市の沖合で試験運用した。
 環境計量の技術は高度化・情報化が進む。長崎自動車道の長崎多良見インターチェンジ(IC)-長崎芒塚ICの4車線化工事に伴う騒音・振動計測では、インターネットのクラウドを活用してリアルタイムで監視。迅速な改善に当たった。3Dスキャニングシステムを採用した海底地形の探査、ドローンを使った撮影も進める。
 豪雨や地震は毎年のように起きている。山本社長は福岡県環境計量証明事業協会(51社)の会長を務める。2017年7月に起きた九州北部豪雨では、朝倉市などに会員企業の社員を派遣。断水になった杷木地区で井戸水や沢水が飲用できるか無償で検査をした。これを機に18年7月、災害が起きた際に連携する協定を北九州市と結んだ。
 環境への意識は高まり、音や臭いにも敏感な社会になった。企業や行政と、住民の衝突も増えている。「中立を基本に、現実的な方策をまとめる。対象は人を含む自然だ」と山本社長。培った技術と知恵を携え、人と自然、社会が共存するための最適な“解”を生み出す。

海水のサンプルを採取する従業員=大村湾

◎西部環境調査
 佐世保市三川内新町。1980年2月に古谷敏治氏や田道雅治氏らが創業した。山本利典代表取締役社長は5代目。従業員は67人(3月現在)。本社のほか福岡事業所、長崎調査所、熊本と佐賀に営業所がある。主な取引先は九電産業、ジェイペック、国交省、農水省、福岡県、長崎県など。

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