「人手不足」関連倒産、 5月は31件、「求人難」型が前年同月比3.6倍増

 企業倒産が低水準をたどる中、「人手不足」に起因する倒産は過去最悪を記録した昨年を上回るペースで推移している。 5月31日、厚生労働省が発表した4月の有効求人倍率は、前月と同水準の1.63倍だった。人手不足は中小企業ほど深刻なしわ寄せを受け、2019年1月‐5月累計の「人手不足」関連倒産は150件(前年同期比1.3%増、前年同期148件)に達した。また、地方でも増加の兆しが出ており、今後の動向が注目される。

5月の「人手不足」関連倒産は31件、「求人難」が3.6倍増

 2019年5月の「人手不足」関連倒産は31件(前年同月比18.4%減、前年同月38件)で、2カ月連続で前年同月を下回った。
 内訳は、最多は代表者や幹部役員の死亡、入院、引退などの「後継者難」型の13件(前年同月30件)。次いで、人手確保が困難で事業継続に支障が生じた「求人難」型が11件(同3件)で3.6倍増と急増した。この他、幹部や中核社員の独立、転職などの退職から事業継続に支障が生じた「従業員退職」型も5件(同2件)と増加が目立った。賃金等のコストアップから収益が悪化した「人件費高騰」型は2件(同3件)だった。

産業別 サービス業他が最多

 産業別では、最多はサービス業他の12件(前年同月6件)。次いで、建設業6件(同8件)、製造業4件(同8件)、小売業3件(同4件)、卸売業(同7件)と運輸業(同1件)が各2件、不動産業(同2件)と情報通信業(同2件)が各1件。農・林・漁・鉱業(同ゼロ)と金融・保険業(同ゼロ)は発生がなかった。

地区別 6地区で発生

 地区別では、全国9地区のうち、6地区で発生した。関東13件(前年同月18件)を筆頭に、中部(同5件)と九州(同2件)が各6件、近畿(同1件)が3件、東北(同3件)が2件、四国(同2件)が1件。北海道(同2件)、北陸(同ゼロ)、中国(同ゼロ) は発生がなかった。都道府県別では、東京(同11件)が7件で最多だったが、徐々に地方でも増加が目立ってきた。

人手不足関連倒産月次推移

2019年1-5月の要因別、「求人難」型が2.3倍増

 2019年1-5月の「人手不足」関連倒産は150件(前年同期比1.3%増、前年同期148件)で、過去最多を記録した前年を上回るペースで推移している。
 内訳は、「後継者難」型が85件(同26.7%減、同116件)、「求人難」型が37件(同131.2%増、同16件)、「従業員退職」型が16件(同77.7%増、同9件)、「人件費高騰」型が12件(同71.4%増、同7件)だった。「後継者難」型が約6割(構成比56.6%)を占めるが、「求人難」型や「従業員退職」型の急増ぶりが際立った。

2019年1-5月累計、サービス業他が最多44件

 2019年1-5月累計の産業別では、サービス業他が44件(前年同期比22.2%増、前年同期36件)で最多だった。次いで、建設業28件(同7.6%増、同26件)、製造業17件(同32.0%減、同25件)、卸売業16件(同46.6%減、同30件)、小売業15件(同15.3%増、同13件)、運輸業14件(同100.0%増、同7件)で続く。
 2019年1-5月の地区別では、9地区のうち九州(15→30件)、近畿(14→21件)、北陸(ゼロ→1件)の3地区で前年同期を上回った。一方、減少は関東(63→57件)、東北(12→9件)、北海道(9→4件)、中国(9→5件)、四国(7→4件)。中部19件は前年同期同数だった。

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