次世代型プラリサイクル生むイノベーション続々

ユニリーバ、黒い色付きプラスチックを再生可能に

IMAGE: UNILEVER

ユニリーバU.K.は、シャンプーなどのケア用品を扱うブランド「TRESemmé」と、男性用ボディケアブランド「Lynx」のポリエチレン製ボトルに使用する、新たな黒色の色素を開発した。これまではリサイクル施設で黒いプラスチックを検知できなかったが、この色素は検知が可能。新たに年間2500トンものプラ容器がリサイクル可能になる見込み。これはロンドンのバス200台分、一般の乗用車の1250台分の重量に相当する。(翻訳=梅原洋陽)

現在、冷凍食品やスーパーの惣菜などで使われる一般的な黒色のプラスチック容器やペットボトルなどは、リサイクル施設の自動検知装置では検知できない。黒い色素が選別のための赤外線を吸収してしまい、プラスチックとして認識されず、ごみとして判定されてしまう。

ユニリーバは、RECOUP社や廃棄物処理のパートナーのVeolia社、SUEZ社、Viridor社、TOMRA社と実験を重ね、イギリスのリサイクル施設で、新たに開発した黒い色素を識別することに成功した。同社は識別可能な黒色の容器に関する知識やテクノロジーを、同業者や世界中のマーケットと共有し、世界中への技術の拡散を促進する構え。

「もし全てのリサイクル業者や製造者がこの技術を取り入れたら、黒色プラは完全に識別できる製品となる」とVeolia UK & Irelandのテクノロジー・イノベーション責任者のリチャード・カークマン氏は語る。

「重要だったのは、テクノロジーと包装自体の両方を変化させて課題に向かうこと。このように最先端技術が大規模で黒色プラに応用されたのは初めてで、画期的な出来事だ。リサイクル業界にとって記念すべき大発見。リサイクルのプロセスには、製造者、消費者、リサイクル業者と様々な人達が関わる。大きな変化を起こすには、それぞれが関わるステージで変化を起こしていくことが重要だ」(カークマン氏)

Image credit: The Drum

開発された検知可能な黒い容器は今年度から段階的に導入される。リサイクルされた黒色ボトルも、新しい容器として使われるようになるだろう。

さらにユニリーバUKは2025年までに、全てのプラスチック包装を再使用、再利用もしくは堆肥化可能にすることを目標に掲げる。

同社の黒色プラに関する取り組みは、#GetPlasticWiseキャンペーンの一環だ。同キャンペーンは、イギリスのプラごみに対応する、プラスチック素材に関する5つの計画。プラスチックが経済圏内に留まり、環境圏に流れ出ないようにすることを目標としている。企業のコラボレーションで解決策を探るだけでなく、消費者にプラスチック消費を減らす方法を伝えることも盛り込まれる。

同社のGM・セバスチャン・マンデン氏は「TRESemmé と Lynxのボトルに新たな技術を使用することで、2500トンものプラスチックを有効利用できる。改革を可能にしてくれている、パートナー達に感謝している」と語った。

プラスチックを徹底的にリサイクル可能資源に:バークレー国立研究所

一方、アメリカ合衆国エネルギー省のローレンス・バークレー国立研究所の研究者たちは、リサイクルが可能なプラスチック素材を開発した。レゴのように、分子レベルで分解が可能で、品質や機能を失うことなく、異なる形や色に新たに作り変えることができるという。この新素材はPDK(poly (diketoenamine)、ポリジケトンアミン)と呼ばれる。

ペットボトルから、車のパーツまで、全てのプラスチックはポリマーと呼ばれる大きな分子でできている(ポリマーは短い炭素化合物のモノマーという物質から成り立っている)。プラスチックを頑丈にしたり、柔らかくしたりする化合物がモノマーと強く結びつき、リサイクル施設で処理をした後でもプラスチック内に残ってしまうことが多くのプラスチックの問題だ。

硬かったり、柔らかったり、透明だったり、カラフルだったりと様々な科学的要素を含むプラスチックが処理の過程で混ぜられ、塊になる。様々な要素が混ざったプラスチックの塊が、新たな素材を作るために溶かされたときに、どのような特徴を引き継いでいるかを予測することが難しい。

この予測不可能な性質が、リサイクル界の究極の課題だった。「循環」する資源、つまり、もともとの特性を何度も使用したり、より高品質に作り変えられるような特徴を目指す上での、難問だ。

分子研究所の研究者で、学際的プロジェクトのメンバー、ブレット・ヘルムス氏は「PDKであれば、従来のプラスチックの不変の性質を変えることができる。結合を戻すことで、プラスチックをより効率的にリサイクルすることが可能になる」と話す。

様々な製法を試した結果、酸がPDKポリマーをモノマーに分解するだけでなく、処理の過程が絡み合った添加物を引き剥がしていることも分かった。そして、分解されたPDKモノマーは再度ポリマーに再構築でき、そのポリマーは色などの特性を引き継ぐことなく、新たなプラスチック素材を作ることができた。もし、黒色の時計のバンドがPDKプラスチックで作られていたら、新たにパソコンのキーボードとなったり、柔軟性などの特性を加えてアップサイクルすることができる。

Image credit: Berkeley Lab

循環型プラスチック社会へ

研究者達は、新たに開発されたリサイクル可能なプラスチックは、従来プラスチックの代用品になることができると信じている。

「私達は今、将来のゴミの分別や加工を考えて、ゴミ処理施設のインフラを再検討するべきだ。もし、ゴミ処理施設がPDKや関連するプラスチック製品をリサイクルしたり、アップサイクルできるようにデザインされれば、より効率的にプラスチックを埋立地や海から取り除くことができる。循環型プラスチックを可能にするために、素材とリサイクル施設の両方を考え直すことが重要だ」とヘルムス氏は言う。

研究者達は、繊維、3Dプリント、発泡スチロールなど、様々な性質のPDKプラスチックを開発していく予定だ。そして、植物由来の素材やその他のサステナブルな素材を使った製法も探求し続けるだろう。

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