『耳を腐らせるほどの愛』 芸人さんの脚本をあなどるなかれ!

(C)『耳を腐らせるほどの愛』製作委員会

 お笑いコンビ「NON STYLE」の石田明が脚本を担当し、相方の井上裕介が殺されてしまった主人公を演じるミステリーコメディ。監督は、映画『森山中教習所』の豊島圭介が務めています。

 無人島のホテルで、何者かに殺害された井上演じる鈴木鈴吉。宿泊客の中に犯人がいる! というアガサ・クリスティばりの密室劇が繰り広げられるのですが、やはり脚本が芸人さんだとそんなミステリーも全く違うものになってくる。死体のはずの井上がむっくり起き上がって喋り出すところから、それはそれはくどくて思わず笑ってしまいます。

 「吉本の芸人が書いた脚本なんて」と思うかもしれません。でも侮るなかれ、実は吉本の芸人さんには脚本家としての優れた才能を持つ人がたくさんいて、私は石田さんの才能にかなりビンビンきております。吉本は、芸人さんが台本を書いて上演する舞台がたくさんあるのですが、私も随分前に本物のデニーズで上演された客と演者の一体型シチュエーション芝居を観に行ったことがありまして。そこで全く飽きない台本を書いていたのが石田明さんだったんです。舞台慣れした石田さんの脚本なので、この作品も映画というよりは舞台っぽさがすごくあります。八嶋智人さんや小木茂光さんなど演劇畑でも活躍する人たちを始め、役者さんたちの白熱しながらも面白さをきちんと押さえた会話劇は終始笑えて仕方がない! 最近バラエティでブレイクしている長井短も出演しているので、ぜひチェックしてみてくださいね。★★★☆☆(森田真帆)

監督:豊島圭介

出演:井上裕介、森川葵、八嶋智人ほか

6月14日(金)から全国公開

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