『ウィーアーリトルゾンビーズ』 アバンギャルド!って叫びたい

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 電通所属という異色の肩書を持ち、有給休暇を使って撮った短編映画『そうして私たちはプールに金魚を、』がかの有名なサンダンス映画祭の短編部門でグランプリに輝いた長久允監督の長編デビュー作です。

 両親を亡くし、心も亡くしてゾンビのように生きる少年少女が出会い、バンド「リトルゾンビーズ」を結成する物語。池松壮亮、菊地凛子、永瀬正敏、佐野史郎、佐々木蔵之介、村上淳など長久監督の才能に惚れ込んだ錚々たる俳優たちが出演していますが、いい意味で彼らはどうでもいいです。というのも、主役の「リトルゾンビーズ」が良すぎるから!

 4人の子たちの冷めまくった演技が秀逸。私の世代の映画の、親を亡くして心が傷ついた主人公ってだいたいタバコを吸ったり、喧嘩して人を傷つけちまう! というど熱い不良が多かったのですが、この4人がそれはそれは現代っぽいわけです。長久監督の作り出す映像世界も含め、耳にいつまでも残るポップな音楽、台詞のテンポ、カメラワークの全てが観たことなさすぎるため、思わずアバンギャルド!って叫びたくなりました。

 王道な映画ばかり観ている人にとっては最初「ナンジャコリャ」感がすごく強いのではないでしょうか。でも、この新しさこそが世界の映画祭を席巻しているんだと思います。実は私もなかなかこの感覚になれなかったのが悔しかったんですが、新感覚をどんどん磨きたいなってすごく思いました。皆さんにも新しい感覚を刺激されながら観ていただきたいです。余談ですが、冒頭の短編は、公式サイトを通して全編観れるようなのでぜひ先に観て長久監督の世界観を予習して行ってくださいね。★★★☆☆(森田真帆)

監督:長久允

出演:二宮慶多、水野哲志、奥村門土、中島セナ

6月14日(金)から全国公開

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