「己書」で自由な世界観を 佐世保出身で愛知在住 池田美穂さんが教室 「古里の人に魅力伝えたい」

1対1で生徒に指導する池田さん(右)=長崎市、城栄会公民館

 心の中に浮かんだ言葉を、書き方や書き順にはとらわれず筆を走らせる書画「己書」(おのれしょ)。筆ペンや水彩絵の具を使い、絵のようにも文字のようにも見える作品と挿絵がつくる自由な世界観が人気だ。佐世保市出身で愛知県一宮市在住のパート従業員、池田美穂さん(43)は長崎市で月2回教室を開き、「まだなじみが薄い己書の魅力を古里の人にも伝えたい」と話す。

 池田さんは2015年、会員制交流サイト(SNS)上で目にした作品に書かれていた前向きな言葉に感銘を受けた。自分も取り組んでみたいと名古屋市にある「日本己書道場」で学び、昨年冬に公認の「道場師範」の資格を取得。池田さんは「長崎県内でいつか教室を開きたい」と考えるようになったという。

 同じように己書に興味を持ち、道場に教室開講の打診をしてきた長崎市の市瀬日登美さん(58)の雑貨店(若草町)で、池田さんは今年2月から教え始めた。

 5月からは城栄町の城栄会公民館へ移動。毎月最初の日曜と月曜に開いており、現在は4歳から80代まで約30人が取り組んでいる。

 1対1で向き合い、じっくり教えるのが「池田流」だ。生徒は一筆で円を描く「円相(えんそう)」や「あいうえお」の書き方といった基礎を学んだ後、挿絵を練習する。少し慣れてくると、池田さんがその場で書いたお手本を見ながら生徒が筆を運ぶ。「文字のかすれが味になります」「文字と文字の間は余白をつくらないように」。生徒が書き上げた作品に、さらにアドバイスを加える。

 教室の運営を手伝いながら学ぶ市瀬さんは「一見難しそうだがポイントを上手に教えてくれるので、すぐ書けるようになる」。

 同道場によると、県内在住の師範有資格者は5月末でゼロ。池田さんは「長崎でも、己書の楽しさを一緒に伝えてくれる人がどんどん増えたらうれしい」と話す。

 教室は1回90分で2160円。問い合わせは市瀬さん(電095.894.9365、木曜-土曜正午~午後7時まで)。

 ■己書
 2012年に企業コンサルタントの杉浦正氏が確立した、新しいジャンルの書画。上手下手や年齢に関係なく、自分の世界観や個性を自由に表現できる。教室の開講には、己書の教室に通って試験を受け、「日本己書道場」(名古屋市)公認の「道場師範」の資格を得ることが必要。同道場によると、6日現在、国内外で師範の数は約800人。

教室に通う生徒たちの作品

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