世界ボクシング協会(WBA)と国際ボクシング連盟(IBF)バンタム級チャンピオン、井上尚弥(大橋)への評価がますます上がっている。
米国の権威ある専門誌「ザ・リング」が全階級を通じた現役最強ランキングで井上を4位に位置づけた。
過去最高のランクに本人も「すごく名誉あること」と感激の面持ちだ。
恐ろしいほどのパワーは「モンスター」の愛称もぴったり。果たしてその抜きん出た才能はオールタイムのバンタム級でどの程度の力量なのか。ファンなら知りたいところだろう。
長い歴史を誇る世界のバンタム級。多くの専門家、ファンの間ではエデル・ジョフレ(ブラジル)最強論が定説となっている。
1960~70年代に活躍したジョフレは安定感抜群。左右どちらにもKOの威力を秘め「黄金のバンタム」とまで形容された。
ファイティング原田に初黒星を喫し、9度目の防衛に失敗したが、その後、フェザー級王座を奪い、2階級制覇を達成した。
引退して約40年が経つが、今なお「ジョフレを超えるボクサーはいない」と言われている。
もちろん、このクラスは名だたる強豪を生んできた。特に「バンタム級の宝庫」でもあるメキシコには逸材がズラリ。
その中でもルーベン・オリバレス、カルロス・サラテの二人の強打は出色だ。
オリバレスの休むことを知らない猛打、サラテのピンポイントを外さない一撃には驚くばかり。それでもジョフレ最強は揺るがなかった。
そこに現れたのが井上である。スピード、テクニック、パンチの三拍子がそろい、ライトフライ級、スーパーフライ級の世界王座をわずか8戦で獲得。さらにバンタム級に転向してから才能は大きく開花する。
昨年5月、WBA王座を1回TKOで奪い3階級制覇。10月にはワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)初戦で1回に右ストレート一発でKO。今年5月には英国に遠征、実力派のIBF王者を難なく2回TKOに退けた。
この「グラスゴーの衝撃」は世界中に強烈なインパクトを与えた。
WBSS決勝の相手は元5階級制覇王者ノニト・ドネア(フィリピン)。経験豊富なベテランを文句なしの内容で下せば、ジョフレとの比較論が熱を帯びてくるのではないか。
日本最多の世界戦13連続防衛を記録した具志堅用高氏も「井上のパンチ、スピードは別格。すごいとしか言いようがない」と脱帽している。
バンタム級定説への挑戦。モンスターへの期待は大きい。(津江章二)