「15周年、いろいろあるから、よろしく!」9mm Parabellum Bullet、6番勝負の対バンツアー、第一弾はavengers in sci-fi!

9mm Parabellum Bulletによる対バンツアー〜15th Anniversary〜『6番勝負』の幕が切って落とされた。結成から15周年を迎えている彼らが企画するライヴで、その初日はつねに心地よい熱気に包まれ続けた、最高の夜となった。

6月8日・土曜日、会場であるF.A.D YOKOHAMAは完全ソールドアウト状態。今夜の相手のavengers in sci-fi(以下アベンズ)はかねてから9mmといい関係を持ってきた存在で、しかもこのF.A.Dは両バンドにとって思い出深い場所だという。それだけに場内は開演前からオーディエンスの期待値の高さが匂うような空気が漂っていた。

まず登場したアベンズは冒頭から爆音とともに疾走! それに乗ってフロアも一気に高まっていく。数曲の演奏ののち、フロントマンの木幡太郎が「俺らが15周年のイベントを新木場STUDIO COASTでやった時に9mmを呼んだんですね。それで今日、呼んでもらえたんだと思います(笑)」と話すと、会場からは笑いや拍手が起こる。そして感謝を述べながらも「6番勝負ね……今日は相手が悪かったな。俺ら、400戦無敗なんで。こう見えても!」と続けると、今度は熱い歓声が返った。中盤は「Sonic Fireworks」などでトリッピ―な空間を創出した3人。再びのMCでは、9mmの中でも特にアベンズに入れ込んできたかみじょうちひろの話題が出るなど、終始いいムードだ。そして後半、「Citizen Song」に至る箇所ではなんと9mmの「Vampiregirl」のイントロがはさみ込まれるサプライズが! 彼らはそのままロックのダイナミズムを叩きつけるようなパフォーマンスを見せ、興奮の渦を巻き起こしながらステージを降りたのだった。

そしてこれを受けての9mmのライヴは、まさに快演だった。近年の彼らのライヴはサポートギタリストを含めた5人体制が定着、その効果でサウンドに厚みや豊かさが生まれている。序盤にはついさっきアベンズがサワリだけプレイした「Vampiregirl」を披露! 今の9mmは豪快さとともに一体感が高く、そのテンションがダイレクトに客席に響いている。最高だ。

最初のブロックを演奏し終えたところで、ヴォーカルの菅原卓郎は今夜の対バン相手への謝辞を述べながらも「俺らはavengers in sci-fiに負けないから!」と話した。「6番勝負」と銘打っていることもあり、先ほどの木幡の言葉を受けてのものだろうが、それでも両者に感じられるのは互いにリスペクトの念を持っていることだ。思い返せば9mmはこれまでも対バン企画を数多くやってきたが、そこにはつねに相手への真摯な姿勢があったし、そのまっすぐさもこのバンドの魅力のひとつである。そして中盤に演奏された4月リリースの最新シングル「名もなきヒーロー」は、彼らにとって初めての応援ソング。サウンド的には9mmの王道路線だが、楽曲が放つポジティヴな感覚は今までになかったものだ。バンド自体のあり方、それに菅原の人間性が反映されている。

こうしてライヴは新旧の楽曲が配されながら進行していった。一時期は左腕の不調に苦しんだ滝 善充はすっかり復調し、ギターで好プレイを連発。かみじょう&中村和彦のリズム隊はタフネスを増している。そしてセンターで叫ぶ菅原は、客席にしっかりと対峙する姿が頼もしく、しかもそのたたずまいや笑顔には包容力さえ感じられる。これにはここ数年のソロ活動を通じて得たものも反映されているに違いない。

終盤に差しかかる前には、以前アベンズと浜松で対バンした時に打ち上げで盛り上がり、路上で肩を組んで長渕剛を唄ったことを暴露して、観客の笑いを誘った菅原。そしてこの対バンツアーについては「今回は同世代(のバンド)が多いんですけど、それは同じ時代を生きているぞ、同じ時代を生きてきたぞ、という気持ちがあるからです」と表明した。本ツアーでは今後もこうして相手のバンドとの関係や回想などが語られていくのだろう。また、彼はこのF.A.Dというライヴハウスでのイベントの思い出や、ここへの感謝の気持ちも示した。それは今夜だけをとってもさまざまな過去があるからこそ組まれたライヴであることがわかる瞬間だった。

クライマックス、バンドは「Black Market Blues」「新しい光」など、剛速球クラスのナンバーを連発。「15周年、いろいろあるから、よろしく! 9mm Parabellum Bulletでした……またね!」笑顔で去っていく4人と、深く礼をする菅原。フロアにひしめく誰もかれもが上気しきった顔をしている。現在の9mmがいい状態にあることが感じられる、最高の夜だった。

菅原が言っていたように、今年の9mmは盛りだくさんだ。この対バンツアー「6番勝負」の残り5本はまさに個性的なバンドたちを迎えながら、10月までに各地で断続的に開催される。その間の6月26日には、この3年間のライヴを集約した映像集『act Ⅶ』を発売。苦しみの中で光明を見出そうと闘ってきた9mmの姿が刻まれた作品になっている。

そして今夜、終わり際のMCで菅原はファンに向けて「ニューアルバムのミックスが終わりました!」と報告した。すでに『DEEP BLUE』というタイトルがアナウンスされているこの作品は9月のリリースが予定されている。傑作と評された前作『BABEL』から2年以上を経ての9mmはそこでどんな音世界を紡ぎ出しているのか、期待して待ちたい。さらに翌10月から11月にかけては、このアルバムに伴っての全国ツアーが発表されている。

2019年、充実感いっぱいで15周年のアニバーサリーイヤーを駆け抜けようとしている9mm。彼らのロックサウンドが少しでも多くの人のところに届くことを願う。

それはきっと、そのひとりひとりの日常をポジティヴにしてくれるはずだ。

text:青木優 photo:橋本塁(SOUND SHOOTER)

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