次に接近するのは1000年以上先。赤外線撮影された「岩本彗星」

こちらのアニメーション画像は、NASAの赤外線天文衛星「NEOWISE」が撮影した「C/2018 Y1 (Iwamoto)」、通称「岩本彗星」の姿。画像の色は擬似的なもので、高い温度を示す「青」と「緑」は波長3.4マイクロメートル、低い温度を示す「赤」は4.6マイクロメートルの赤外線をキャッチしたものとなります。

背景に広がる恒星は温度が高いので青や緑で写っていますが、岩本彗星の周囲に広がるチリは温度が低いため、ぼやっとした赤い姿で捉えられています。

岩本彗星は徳島県在住の岩本雅之さんが2018年12月19日に発見した彗星で、2019年2月13日頃に地球へ最接近しました。NEOWISEによって撮影されたのは最接近後の2月25日のことで、当時の地球からの距離はおよそ9000万km(地球から月までの距離の230倍以上)でした。

岩本彗星は太陽系を取り巻くオールトの雲が起源と考えられており、その公転周期は実に1000年以上に及ぶとされています。1000年前(11世紀)といえば、日本では平安時代の後半。岩本彗星は、その頃の地球にも接近していたかもしれません。

有名なハレー彗星の公転周期はおよそ75年なので、人によっては人生で2回目撃することも可能ですが、岩本彗星(C/2018 Y1 (Iwamoto))が次に太陽へ最接近するのは10世紀以上も先のこと。いま生きている人たちが地球から肉眼で観測することは、もうできません

こちらの動画はNorbert Span氏が撮影し、2019年2月19日付の「Astronomy Picture of the Day」で公開された岩本彗星の姿。緑色に輝く岩本彗星が、棒渦巻銀河「NGC 2903」のすぐ近くを移動していく様子が見事に捉えられています。

公転周期が200年を超える彗星は「長周期彗星」と呼ばれていて、なかには1996年に接近した「百武彗星」のように、10万年を超えるような周期を持つものもあります。

肉眼で簡単に観測できるような彗星はそうひんぱんに見られるものではありませんが、一生のうちに二度と見られない彗星もめずらしくはありません。機会があれば、夜空を見上げて観測に挑戦してみたいものです。

Image credit: NASA/JPL-Caltech
https://solarsystem.nasa.gov/resources/2455/oort-cloud-comet-c2018-y1-iwamoto/
文/松村武宏

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