スティング『マイ・ソングス』 現在の視点で見つめなおした名曲たち

スティング『マイ・ソングス』

 シンプルに『マイ・ソングス』と題された最新作はポリス時代からの彼の代表曲集、なのですが、所謂ベスト・アルバムや再録のセルフ・カヴァー・アルバムでもなく、ましてや人気DJによる流行のリミックス・アルバムでもありません。『グレイテスト・ショーマン』の曲を相応しいアーティストで録音し話題になった作品と同じ“リイマジンド”アルバムです。

 デビュー以降アーティストはその時点での最高のパフォーマンスを作品として残します。しかし時を経ると共に録音時には気がつかなかったアイデアが頭をもたげます。“リイマジン”とは再考する、見つめなおすという意味で、過去の作品を否定するのではなく時代に応じた魅力を加える作業なのです。全体的にはリズムとヴォーカルをよりエモーショナルなものに変えていますが、他にギターのサウンドを変えたり、「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」ではニューヨークの雑踏のSEを加える演出をしています。また各曲の制作秘話や曲作りの技術的な過程などが書かれた彼自身によるライナーも魅力です。

(ユニバーサル・2500円+税)=北澤孝

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