TCRオーストラリア第2戦:アルファ初勝利もTボーンの波乱。バサースト勝者も夫婦で接触

 オーストラリア南部フィリップアイランドでシリーズ創設2戦目を迎えたTCRオーストラリア・シリーズは、バサースト1000勝者のガース・タンダー(アウディRS3 LMS)らを迎えて総勢18台がエントリー。競争激化、アクション満載の週末はディラン・オキーフ(アルファロメオ・ジュリエッタ・ヴェローチェTCR)がシリーズ初勝利から連勝を飾るも、最終レース3で大クラッシュに見舞われた。

 シドニー・モータースポーツパークでの開幕戦を経て、6月8~9日にVASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーやMotoGPでもシリーズに組み込まれる大海を借景にした風光明媚な名物サーキットで、TCRオーストラリアの第2戦が争われた。

 注目は開催直前でエントリーの決まった2007年VASC王者のタンダーで、妻のリアン・タンダーとともにメルボルン・パフォーマンス・センター(MPC)が投入する2台のアウディRS3 LMSで前輪駆動ツーリングカー・デビューを果たした。

 初のTCR規定マシンながら、さすがの名手ぶりを発揮したバサースト1000ウイナーは、最初のFP1でいきなりトップタイムを記録。続くFP2でもタイム更新を狙いフライングラップに入ったが、わずかにコースオフを喫した際に駆動系にダメージを受けてストップ。

「あとコンマ5秒は上げられそうだっただけに残念だ」と、このセッションでタイム更新を果たしたオキーフのアルファにタイムボード最上位を譲ることとなった。

 明けた土曜の予選でもオキーフがギャリー・ロジャース・モータースポーツ(GRM)のアルファロメオでグリッド最前列を確保すると、午後のレース1ではVASCドライバーのトニー・ダルベルト(FK8ホンダ・シビック・タイプR TCR)、ジェイソン・ブライト(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)、そして若き選手権リーダーのウィル・ブラウン(ヒュンダイi30 N TCR)らを従えてホールショットを決める。

 しかし、スタート早々にこの週末の波乱を予感させる最初のアクシデントが発生し、4番手ブラウンがまだウォームアップ不十分なタイヤのせいでターン2をワイドになりコースオフ。慌ててトラックへ戻ると、ジョン・マーティン(FK8ホンダ・シビック・タイプR TCR)、ネイサン・マルコム(ヒュンダイi30 N TCR)らが行き場を失い接触し、早速のセーフティカー(SC)出動となった。

 さらに4周目のリスタートでは初参戦タンダーが仕掛け、3番手ブライトのVWにオーバーテイクを試みるも、ディフェンスにあったアウディは軽いコンタクトで弾かれポジションをドロップ。これで漁夫の利を得たケリー・レーシングのアンドレ・ハイムガートナー(スバルWRX STI TCR)とジミー・バーノン(アルファロメオ・ジュリエッタ・ヴェローチェTCR)が3、4番手を手に入れる。

 するとポジション奪還を逸ったブライトがスバルのリヤにヒットし、バーノンもこれを回避するためスピンを喫するアクシデントが発生し、レースは再びのSC先導に。

■レース1に続き、レース2も波乱が続く展開に

バサースト1000で3勝を挙げているガース・タンダーは、初参戦のTCRでも高い順応性を披露する
予選ポールを獲得したディラン・オキーフ(中央)。TCR生みの親であるマルチェロ・ロッティ(左)も駆け付け、2020年の隣国NZシリーズ創設も発表した
首位アルファロメオの背後には、ダルベルト、ブライト、タンダー、ハイムガートナーと、VASC出身の猛者がズラリと並ぶ
R1オープニングでコースオフを喫したウィル・ブラウンだが、2位まで挽回する強さを示した

 予定された13周より早く最大延長時間が訪れそうな9周目のリスタートからはさらにバトルが激しさを増し、首位のオキーフが逃げを打つ間にFK8のダルベルト、こちらもVASCドライバーのジェームス・モファット(ルノー・メガーヌR.S.TCR)、そしてタンダーのアウディが3ワイドになると、インを抑えたモファットが2番手へ。もっともアウト側に位置どったタンダーが再びポジションダウンを喫してしまう。

 この勝負の隙を突いたのがその後方を走っていたブラウンで、ホンダとアウディをまとめてかわすと、ファイナルラップでルノーのモファットも仕留めて2位フィニッシュ。このオーバーテイクで初勝利を飾ったオキーフに対し、わずか6ポイント差で選手権首位を維持することに成功。3位にルノー初となる表彰台を獲得したモファットが続き、ダルベルト、タンダーのトップ5となった。

 続く日曜に開催されたレース2、レース3も荒れた展開となり、土曜決勝のリザルト順でスタートしたレース2は、アルファのオキーフがヒュンダイのブラウンを抑えて連勝を飾るなか、オープニングラップ後方では再びの混乱が発生。

 5番手モファットのメガーヌがスピンを喫し、ハイムガートナーのスバルやタンダーのアウディを巻き添えにすると、彼らがコース復帰したところで2度目のアクシデントが起こり、VWのキャメロンを中心に接触の連鎖が起こり、スピンモードに陥ったタンダーのアウディは妻であるリアンのRS3にヒットしてストップ。このレース唯一のリタイヤとなってしまった。

 そして1時間のインターバルを経てスタートしたレース3は、同じくフロントロウに並んだオキーフとブラウンが力強いダッシュを見せる。しかし悲劇はターン2で口を開けて待っており、ターン1出口からサイド・バイ・サイドでの軽い接触に堪えきれずスピンを喫したアルファロメオは、その後方から迫ってきた2台のホンダとスバルを混乱に陥れ、ハイムガートナーがダルベルトのシビック後方にヒット。

 そのダルベルトに押された形でスピンしたチームメイトのジョン・マーティン(FK8ホンダ・シビック・タイプR TCR)がリヤからアルファロメオに突っ込む形となり、GRMのマシンはTボーンの状態で大破。

 さらに女性ドライバーのアレクサンドラ・ウィットレー(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)は回避行動でラジエターを破損し、同じくチェルシー・アンジェロ(ホールデン・アストラTCR)はTCR初参戦のハミシュ・リバッツ(アウディRS3 LMS)にヒットされるなどクラッシュが連鎖し、ここで連日出動のSCがコースインすることに。

 これで楽になったHMOカスタマー・レーシングのブラウンは、チームメイトのマルコムを引き連れワン・ツー・フィニッシュを飾り、選手権でもオキーフを52ポイント引き離す盤石のリードを築いた。

 3位にはMPCのアーロン・キャメロン(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)が入り、同じくMPCでTCRデビューの週末を戦ったタンダーがR2の雪辱を果たす4位フィニッシュ。妻のリアンもトップ10入りし、夫婦で完走を果たしている。

 シリーズの醍醐味とも言える肉弾戦が続くTCRオーストラリア、その初年度シーズンの第3戦は7月13~14日にオーストラリア南部アデレード近郊にあるザ・ベンド・モータースポーツ・パークで開催される。

アルファに並んでルノー・メガーヌR.S.TCRも投入するGRMは、ジェームス・モファットがR1で3位表彰台を獲得
前輪駆動レースカー初ドライブで、R2での混乱に”揉まれた”ガース・タンダーは、妻リアンのアウディに接触
イン側で発生したTボーンをからくもかわしたウィル・ブラウンがR3で今季3勝目をマーク
ウィル・ブラウン(中央)は244点で選手権首位に立ち、2位にオキーフが続く

© 株式会社三栄