太古から続く神秘的な原生林 レッドウッド国立・州立公園 − カリフォルニア州 − 世界遺産とは 地球の生成と人類の歴史によって生み出され、未来へと受け継がれるべき人類共通の宝物としてユネスコの世界遺産条約に基づき登録された遺産。1972年のユネスコ総会で条約が採択され、1978年に第1号が選出された。2018年7月現在、167カ国で1092件(文化遺産845件、自然遺産209件、複合遺産38件)が登録されている。

桁違いの巨木が立ち並ぶレッドウッド国立・州立公園。映画『スター・ウォーズ』のロケ地としても有名 ©︎Visit California/Carol Highsmith

カリフォルニア州の北西、オレゴン州との境に近い海岸線にあるレッドウッド国立・州立公園。ここには世界一の樹高で知られる常緑針葉樹、セコイアメスギ(通称レッドウッド)に覆われた巨大な森が広がっている。約2000万年前からこのエリアに存在したといわれる、悠久の原生林だ。

かつては世界各地で見られたレッドウッドだが、気候変動や造山活動により次第に減少し、今では理想の生育条件が揃った北米西海岸の一部地域にしか自生していない。この類まれな自然美と、沿岸部とそこに連なる山々という地形的環境が育んだ特徴的な生態系が評価され、1980年に世界自然遺産に登録された。

公園の広さは約13万1900エーカー。レッドウッドの古代樹が占めるのは、そのうちの3分の1ほどだ。レッドウッドの樹高は330フィート以上、直径は20フィート前後。35階建ての超高層マンションと同じくらいの背丈になる。現在このエリアに自生しているレッドウッドの平均樹齢は500〜700年。もっとも古いものだと2000年ほどにもなるそうだ。

パワー宿る古代樹の森で森林浴

シダに囲まれたファーン・キャニオンは、隠れた楽園 ©︎NPS Photos

旅の起点はトーマス・H・キークル・ビジターセンター。展示室やビデオ上映などで公園の概要を学んだら、マップを持っていざ出発。15分ほど北へドライブすると、プレイリークリーク・ビジターセンターにたどり着く。ここを起点に広がるジェームズ・アーバイン・トレイルは、レッドウッドの古代樹が生い茂る人気のハイキングルート。

苔むした神秘的な森のパワーを感じながら、エルク・プレイリーに向かって歩こう。この辺りではルーズベルトエルクというシカの一種が多く見られる。大きな体と立派な角を持つ雄は、絶対見ておきたい動物の一つ。ビジターセンターより北西へと歩いて行くと、ファーン・キャニオンにたどり着く。シダで覆われた壁の間を小川が流れる、美しい渓谷だ。生い茂るシダの一部は、3億年以上前から続く品種なのだとか。

車でさらに北のクラマスリバー展望所へ行くと、太平洋の入り江が一望できる。12〜翌4月の間に行けば、コククジラが見られることもあるそうだ。この辺りの海岸線にはアシカやカッショクペリカン、ハクトウワシなども訪れる。

レッドウッド国立・州立公園が面する海岸線も美しい ©︎NPS Photos

次は公園の南側に移動して、トールツリーズ・トレイルへ。ビジターセンターで事前に許可書(無料)をもらわないと入れないトレイルだ。ここには北側よりさらに巨大な木々が立ち並び、その景観に圧倒される。木々の間を歩いていると、なんだか自分がちっぽけな存在に思えてくるだろう。このエリアには「ハイペリオン」と名付けられた、樹高379フィートの世界でもっとも高い木が存在するのだが、その明確な位置は明かされていない。うまくいけば、その木を見つけられるかも。

歴史と神秘に溢れたレッドウッドの森。年間の降水量が多いため、訪れる際は雨具と滑りにくい靴を持って行こう。

遺産プロフィール
レッドウッド国立・州立公園
Redwood National and State Parks
登録年 1980年
遺産種別 世界自然遺産
https://www.nps.gov/redw/index.htm

ライタープロフィール
齋藤春菜 (Haruna Saito)
物流会社で営業職、出版社で旅行雑誌の編集職を経て渡米。思い立ったら国内外を問わずふらりと旅に出ては、その地の文化や人々、景色を写真に収めて歩く。世界遺産検定1級所持。

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