アメリカのカーシェアリング比較 Turo(ツゥーロ)、getaround(ゲットアラウンド)、Hyrecar(ハイヤーカー)

時代はとにかく、「シェアリング」。自宅をホテルのように貸し出すいわゆる民泊はAirbnb(エアビーアンドビー)が市民権を得ており、一般のドライバーが自家用車を使ってタクシーをするライドシェアサービスUber(ウーバー)は「I’m gonna uber today(今日はウーバーします)」と動詞になるほど、アメリカでは生活に浸透している。

こうした大手企業だけでなく、多種多様なスタートアップシェアリングビジネスがアメリカでヒートアップしている。そこで今回は、借りる側にスポットを当てアメリカで人気の3種類の「カーシェアリング」サービスを紹介する。

個人間車シェアのパイオニア

Turo(ツゥーロ)

2009年に設立し米国カリフォルニア州サンフランシスコに本社を置くTuro(ツゥーロ)は、現地の人が所有している車を借りることができるレンタカーのマーケットプレイスを提供している。現在は5,500以上の都市と300以上の空港で使用でき、850種類以上の車がリスティングされているP2Pカーシェアリングビジネスのパイオニア。「Airbnb for cars(車のエアビーアンドビー)」と呼ばれている。

特徴

レンタカーの配送オプションがユニークな特徴。空港やホテルへ借りる車を届けてくれる、受け渡し場所までの足がない旅行者にとっては非常に助かるオプションだ。しかし、これはTuroが提供しているのではなく貸主となる車の所有者が提供するもので、すべての車に付いているオプションではない。しかし、こうしたサービスを提供することで貸出率が上がるため、所有者はオプションを利用し他者との差異化を図っている。

短時間からのカーシェアリング

getaround(ゲットアラウンド)

カリフォリニア州サンフランシスコに本社を置くgetaround(ゲットアラウンド)は、2011年にオレゴン州ポートランドでサービスを開始した。1時間単位から借りることができ、金額は$5/時間〜と格安。現在は、ボストン、シカゴ、サンフランシスコ、ニュージャージー、ポートランド、シアトル、フィラデルフィア、マイアミ、アトランタ、サンディエゴ、ロサンゼルス、デンバー、ワシントンDCの限られた都市で運用されている。

特徴

1時間単位から借りることが可能。他の多くのカーシェアリングサービスは1日単位での貸出が多いが、短時間レンタルは気軽に少しだけ乗りたいというニーズにピッタリ。また、携帯アプリで車のロックを解除することができるため、直接オーナーと会っての鍵の受け渡しが必要な他のサービスとは異なり、オーナーとユーザーが直接会う必要がない。受け渡しをする場所や時間の設定をしなくて済むため、より便利に貸し借りが可能となっている。

ライドシェアドライバー用のレンタカー

Hyrecar(ハイヤーカー)

Hyrecar(ハイヤーカー)は2014年に設立した新しい企業で、本社はカリフォリニア州ロサンゼルス。Unber(ウーバー)やLyft(リフト)などのドライバーが、ライドシェアに使用する目的のためのカーシェアリングサービス。そもそもライドシェアが新しいサービスだが、そこを狙って作られた非常にニッチな市場だ。キャッチフレーズは「Rent to earn(稼ぐために借りる)」。自分の車を使いたくない、または車を持っていないドライバーのために作られたサービスだ。

車を借りる側は、サイトへの登録を済ませた後にバックグラウンドチェックを行う必要があり、過去の犯罪歴などがクリアになっている人のみが使用可能となる。車を借りるコストは1日$35-$50程度と格安で、長期で借りる場合はディスカウントがあり平均で1週間$200程度。

特徴

Hyrecar(ハイヤーカー)はサービスがフレキシブル。商用目的にかかわらず、必ず払わなくてはならないミニマムの手数料などはなく、必要な時に必要な期間だけ借りることができる。例えば今日はUberドライバーとして仕事をするが明日はしないので、車は今日だけ借りるということが可能なのだ。

共通の特徴

カーシェアリングサービスはそれぞれ違う用途に向けてデザインされているが、共通点がある。

会員費や登録料がない

ユーザーとして登録する際、月額の料金など固定の費用は発生せず、借りる時だけ借りたい分だけ支払えばよい仕組みになっている。ユーザーとしては気軽に借りることができる上、簡単にトライすることが可能だ。

保険も料金に含まれる

車の運転で気になるのが、事故に合ってしまった時の保険。カーシェアリングサービスは企業が手配した保険が料金に含まれていることがほとんど。借りる側も貸す側も安心してサービスを利用できることができる。

貸し借りの交渉は自分達で

シェアリングサービスは「マーケットプレイス」を提供している。車のリスティングや保険、金銭のやりとりなどを担当するが、直接的な貸し借りの交渉はオーナーとユーザーが直接行うモデルである。

最近の傾向

1時間単位でのカーシェアリングを行っているgetaround(ゲットアラウンド)は、ライドシェア大手のUber(ウーバー)とパートナーシップを組みUberドライバーのための貸出サービスを開始した。1時間$5で、レンタカーには付き物な1日の走行距離制限がないというとても魅力的なサービスだ。ライドシェアドライバーのために貸出を行っているHyrecar(ハイヤーカー)とは異なり1時間から借りることが可能。このように、コラボレーションによる新しいサービスも日々誕生している。

アメリカの個人所有車のカーシェアリングビジネスは市場規模を広げており、サービスもよりニッチなものへと進化している。カーシェアリング一つをとっても数多くの種類があるので、用途によって使い分けてみてはいかがだろうか。

Text by SAORI YOSHIDA

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