横浜市営地下鉄脱線、点検作業の手順書なし 事故調査委設置へ

6日午前、脱線した横浜市営地下鉄ブルーラインの車両=横浜市

 横浜市営地下鉄ブルーラインの脱線事故で、現場一帯を管轄する市交通局上永谷保守管理所(同市港南区)に、事故原因となった装置の点検作業に関する手順書が存在しないことが12日、明らかになった。他の2カ所の保守管理所には置かれているものの、上永谷にだけないという。市交通局は、早急に作成し手順の周知徹底を図るとともに、事故調査委員会を設置し、事故原因を詳しく調べる方針。

 事故は6日早朝、下飯田駅(同市泉区)近くで発生。工事用車両を移動させるために使う「横取り装置」が線路上に放置され、装置に乗り上げた始発の上り電車が脱線した。同局は、同日未明に保守点検を行った作業員3人が撤去し忘れ、確認も怠ったとみている。

 横取り装置の点検に関する作業手順書は、3カ所ある保守管理所のうち新羽(同市港北区)と川和(同市都筑区)には置かれているが、上永谷にはないことが事故後に判明した。同局は「どういう経緯かは分からないが、手順書がなくても作業員は(点検について)理解している」としつつ、「本来は保守管理所ごとに作成し、手順書に従って作業を行うべき」と不備を認めた。

 事故が起きた6日、国土交通省は同局に対し、厳重注意する警告書を出した。事故の原因究明と再発防止策について、文書で回答するよう求めている。

 これに対し同局は7日、当面の緊急対策を報告。作業手順書を作成するほか、線路上に装置が置かれたままだと警報が鳴り続ける仕組みづくりや、装置を認識しやすいよう着色することなどに取り組む考えを示した。同局は「できることから早期に着手する」としている。

 一方、同局は近く事故調査委員会を設置。有識者ら第三者を加えることも視野に入れており、作業員への聴取などを行った上で国交省への回答文書をまとめる。「国交省には速やかに報告するよう言われている。設置時期やメンバーなどは現在、協議中」と説明している。

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