香港「民主の女神」 日本語で訴えた切迫感

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明治大で講演する「香港衆志」のメンバーの周庭さん(左)=2019年6月12日、東京都千代田区 香港の立法会周辺でデモ隊(手前)と衝突する警官隊=6月12日(共同)

 大陸からの〝締め付け〟に怒る香港市民の大規模デモは今週、日本でも大いに注目を集めた。このタイミングで来日したのは2014年の香港民主化デモ「雨傘運動」を主導したメンバーの一人、「民主の女神」とも称される周庭(アグネス・チョウ)さん(22)だ。中国本土に容疑者を移送できる「逃亡犯条例」改正案の成立を目指す香港政府に撤回を訴えて、都内の日本記者クラブ、大学で香港の現状を語り、メディアの個別取材にも次々と対応して再び香港に戻る。

 「中国共産党は好ましくない人物を恣意的に逮捕、拘束してきた」「可決されれば、香港はデモをできなくなる場所になるかもしれない。これが最後という気持ちの人が多い」「日本人も関心を持って」。日本のアニメや歌が大好きで独学で学んだという流ちょうな日本語での主張は、同世代の日本人の心にどう響いたろうか。

 ▽挫折と再起

 6月10日の日本記者クラブの会見で、周さんは「香港が返還されてから最も危険な法案」「普段はデモに参加してこなかった、若い人たちも多い。香港政府は無視して進めようとしていて、私たちは非常に怒っている」と切実に語った。

 彼女のこれまでの取り組みを過去の記事で振り返りたい。

 「家でアニメを見ているだけ」の中学生だったが、SNSで政治に関心を持つようになり、17歳だった2014年に雨傘運動に参加したと過去の講演などで語っている。運動のスポークスマンとして広く知られるようになった。しかし、多くの市民が望んだ香港政府トップの行政長官を決める普通選挙導入はかなわなかった。

 その後、人々の熱気は冷めて社会に無力感も漂った。「何の成果も挙げられず、みんな自信をなくしてしまった。まず心の傷を癒やしていきましょう」。わずか数十人に減った集会参加者、夢破れた若者らに対して、18歳になった周さんは再起を目指そうと訴えた。その様子を共同通信記事(15年10月29日)は伝えている。16年に「雨傘運動」を担ったメンバーたちは新党を結成。現在は政党「香港衆志」(デモシスト)の幹部として活動を続けている。昨年は立法会(議会)補選に出馬しようとしたが、香港当局は周さんの届け出を認めなかった。

香港立法会補選で民主派候補の応援演説をする周庭氏(中央)と「雨傘運動」の元リーダーら=2018年3月10日、香港(共同)

 ▽SNSでの発信力

 周さんはツイッター、インスタグラム、フェイスブックなどSNSで積極的に「今の状況」を発信、同世代だけでなく10代の若年層にも主張を伝えようとしている。

 6月13日に香港のデモを支援するかたちで東京・渋谷などで抗議集会があったことに、「日本の皆さん、ありがとうございました」と翌14日には日本語でツィート。いいね、リツィートは合わせて約9000件に及び、「香港加油」(香港頑張れ)とのコメント書き込みも多くあった。これまで日本のアニメ、アイドル文化、サブカルチャーにも深い関心を抱いてツィートをしていることに反応して、日本でも相当のフォロワーを獲得しているようだ。

 彼女の話で特に印象に残るのは、30年前に起きた天安門事件(1989年6月4日)を香港の民主化運動の原点ととらえて、語り継ごうとしている姿勢だ。日本記者クラブでの話から、2017年に中国で事実上獄中死したノーベル平和賞受賞者、劉暁波氏への強い尊敬の念も感じた。市民の力を信じてSNSを駆使して発信を続けるスタンスはこれからもメディアから注目され続けるだろう。

(まとめ 共同通信=柴田友明)

【日本記者クラブでの会見】

【2015年】

2015年9月に共同通信の取材に応じた周庭さん=香港島アドミラリティ(共同)

【2019年】

立法会の敷地からデモ隊を排除する警官隊=2019年6月12日、香港(共同)