<レスリング>【2019年全国中学生選手権・特集】昨年のベスト8から優勝へ躍進…男子38kg級・坂本輪(東京・代々木2年)

(文・布施鋼治、撮影=矢吹建夫)

昨年のベスト8から優勝へ躍進した坂本輪(東京・代々木2年)

 熱戦が続いた6月8~9日の全国中学生選手権大会。男子最軽量級の38㎏級では、JOCエリートアカデミーに在籍する長女を筆頭とした坂本3兄弟の一人、坂本輪(東京・代々木2年)が優勝した。

 坂本は両親への感謝を忘れない。「去年の全中では同じ階級でベスト8だったので、今年は優勝を狙っていました。お母さんは脂肪を燃焼しながらも筋肉を落とさないメニューを作ってくれるなど、食事の面で支えてくれました」

 62選手が参加した同級で4試合を勝ち抜いての優勝だったが、試合運びのうまさは際立っていた。とりわけエビ固めが秀逸に映ったが、本人はローシングル(片足タックル)が得意技だと主張する。「1年前と比べたら技の数を増やしたことが伸びたところだと思います。具体的には、相手の脇を差してから入る新たなローシングルを増やしました」

 テクニックだけではない。所属するAACCの練習にも躍進の秘密があった。「普通の練習が終わったあと、中学生練習という名でもう一回練習してくれることも大きかったと思います」

 中学生練習について、AACCの阿部裕幸代表が補足する。「中学生が強いクラブは、高校のチームの中に混ざって中学生もやってるところが多い。ウチのクラブは中学生までです。通常の練習だけだと限界があるので、中学生だけの集中した練習をやり始めたんです」

姉と弟も活躍、3姉弟で飛躍を目指す

坂本のレスリング歴は長く、自宅近くにあった東京イエローマンズで姉(坂本由宇)と一緒始めたことがきっかけだった。小学1年からはキッズレスラーの多いAACCへ。「最初はお父さんやお母さんに連れていってもらっていたけど、小4くらいからは兄弟で通うようになりました」

4試合を快勝した坂本

 阿部代表は「坂本3兄弟は、総じて際(きわ)の強さがある」と評価する。「輪の場合、小学生の時から際の強さが目立っていました。自分が技をかけた時だけではなく、かけられた時の際も強い。柔道やMMA(総合格闘技)とともにレスリングでも一番必要なところだと思います」

 昨年の全国少年少女選手権男子22㎏級優勝などの実績を持つ三兄弟の末っ子・広は現在小学6年生。兄とともにAACCで汗を流す。すでに姉・由宇は今年2月のクリッパン女子国際大会(スウェーデン)・カデットの部で優勝するなど国際舞台でも活躍し始めた。坂本3兄弟の名前を覚えておいて損はない。

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