長崎県内の免許自主返納 5月に502人 月別で最多 池袋の高齢者事故の影響も

 5月の1カ月間で自動車運転免許証を自主返納した人が県内で502人(前月比97人増、速報値)に上り、統計が残る2010年以降、月別の自主返納者数としては最多だったことが14日、県警のまとめで分かった。県警運転免許管理課は「4月に起きた池袋の死亡事故などを受けて、免許証の継続について考え、返納を決断した高齢者がいたことは間違いない」と分析する。
 この日、大村市古賀島町の運転免許試験場で免許証を自主返納した同市玖島3丁目の生野信義さん(82)は、家族の付き添いはなく、1人で試験場を訪ねた。ドライバー歴は約50年。「自分としては運転技術にまだ自信はある」という。なぜ、返納するのか。
 4月中旬、東京・池袋で高齢者が運転する乗用車が暴走、母子2人が死亡した事故に触れ、語った。「池袋で起きた死亡事故は(返納を)考えるきっかけになった。自分は大丈夫と言ってばかりもいられない。何かが起きてからでは遅いし、80歳にもなって人さまに迷惑はかけられない」
 同課によると、これまでの月別最多は17年3月の468人。今年に入って月ごとに380~418人で推移していた。5月の返納者のうち、65~74歳は117人、75歳以上は365人。市町別内訳(同課調べ)では長崎市が167人(前月比45人増)と最多で、佐世保市100人(同32人増)、諫早市52人(同15人増)と続く。一方で南島原市20人(同7人減)、雲仙市14人(同2人減)など大半の市町が横ばいか減少で推移し、地域間で差がある。
 県警交通企画課によると、昨年1年間で65歳以上の高齢運転者が起こした交通事故は1072件(前年比139件減)。今年5月末時点では442件と前年同期比で6件減っているが、75歳以上に限定すると162件となり、同比で15件増加している。
 免許返納を考えながら、返納後の生活の足を心配してちゅうちょする高齢者も一定数いる。県交通・地域安全課は「地域ごとで交通事情が異なるため県としてひとくくりの対策は難しい。各自治体と連携して足の確保に取り組んでいく」としている。

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