平和宣言に詩を引用

 今年の長崎平和宣言に被爆者が作った詩を配する案を、長崎市長が宣言文起草委員会で示した。被爆者らの言葉を短く引用した例はあるが、聞いた人の共感を得られるよう詩にスペースを割く。起草委員の意見も参考にした▲平和宣言は1948年に初めて「市民代表」名で発表され、その後当時の市長名に代わった。81年からは語り掛けるような表現になった▲内容は世界恒久平和実現への決意が中心だった。核兵器使用による惨状を告発し、被爆者援護の充実を強調、核兵器廃絶を訴えることが加わった。非核三原則の厳守を日本政府に求め、戦争責任の反省を指摘した年もある▲核軍縮をめぐる厳しい情勢下、広島市長も平和宣言に被爆者がつづった短歌などを引用すると明らかにした。両被爆地の試みは世界にどう受け止められるか▲原爆を詠んだ俳句や短歌、詩を仏語、英語に翻訳し広めた俳人見目誠(けんもくまこと)さんの活動を、仏在住の歌人で平和運動家の美帆シボさんがかつて評価していたのを思い出す▲表現形態の特質を生かすことで、被爆者がなぜ核兵器の廃絶を願うのかを人々の心にさまざまな感性で伝えることができる。核兵器に関する情報が少なく、核抑止論の信仰が強い仏国民には政治的なアプローチよりも心に直接訴える表現が効果を発する、と。(謙)

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