被爆十字架 返還へ 旧浦上天主堂で米兵発見 8月、米から浦上教会に

旧浦上天主堂の廃虚で見つかったとされる十字架=米オハイオ州、ウィルミントン大平和資料センター(宮崎広和教授提供)

 長崎原爆で倒壊した旧浦上天主堂(長崎県長崎市本尾町)のがれきから米兵が見つけたとされる木製の十字架が、現在保管している米国の研究機関からカトリック浦上教会に返還されることが15日、同教会や米国の関係者への取材で分かった。返還は8月の見通し。

 長崎市認定の「長崎平和特派員」で米在住の宮崎広和ノースウエスタン大教授(文化人類学)によると、十字架は米オハイオ州ウィルミントン大平和資料センターが所蔵。高さ1メートルほど。金色っぽい色彩で縁取られ、真ん中に模様が描かれており、塗装がはげたり傷ついたりしている。十字架の下部は、何かに差し込むような形状。

 終戦後の1945年10月、長崎に進駐した米軍人ウォルター・G・フック氏(2010年、97歳で死去)の生前の証言では、十字架は天主堂の廃虚で発見し、親交があった当時のカトリック長崎司教、山口愛次郎氏から譲り受けたという。十字架はフック氏が米国の実家に送り、保管。同センターへの寄贈時期は不明だが、広島、長崎の被爆資料などと共に展示されてきた。

 46年2月に帰国したフック氏は70年代、日本で被爆したり米国の核実験で被ばくしたりした退役軍人と共に米政府の責任を追及するなど、原爆投下や核兵器開発に批判的立場を取った。

 ウィルミントン大はキリスト教の一派クエーカーが母体で、同センターはクエーカー教徒の平和活動家故バーバラ・レイノルズ氏が75年に開設した。戦前の日米親善人形交流を研究する宮崎教授は、平戸市立平戸幼稚園で保管されている青い目の人形「エレン・C」がウィルミントンの同教徒から日本に贈られたものであることから、調査のため同センターを5月に訪問。センター側から十字架の返還について相談され、教会側に受け入れを打診していた。

 旧天主堂は原爆で堂壁など一部を残し倒壊、焼失したため、十字架がどこに設置されていたかなど詳細は不明。カトリック浦上教会の久志利津男主任司祭は「教会で受け入れ、展示することになるだろう」と話している。

 米国の同センター幹部や現地関係者は8月に長崎、平戸両市を訪れる予定。

© 株式会社長崎新聞社