「被爆者の人生を表現」 写真集「長崎の痕」出版 大石さんと語る会

写真集について語り合う大石さん(左から2人目)や朝長さん(中央)ら=長崎市岡町、長崎原爆被災者協議会講堂

 写真集「長崎の痕(きずあと)」を3月に出版した写真家の大石芳野さん(東京)と、被写体となった被爆者らが語る会が15日、長崎市内であった。大石さんは「1枚の中に、その人が歩んできた人生や今この瞬間を表現できるかに神経を使った」と語り、被爆者は「世界中の人に見てほしい」と願いを込めた。

 大石さんは今年まで約20年間、断続的に長崎を訪れ、数多くの被爆者らの体験を聞き、撮影。写真集には約130人のポートレートを中心に約220点を収めた。この日は撮影された被爆者らでつくる「写真集『長崎の痕』を広める会」が主催、約120人が訪れた。

 大石さんは「皆さん、にこやかに接してくださったが、心の奥によどんでいるものがとても深く、暗い闇のようだと感じる」と振り返った。「写真集を若い人たちに見てほしい。子どもたちに、被爆者がどんな思いで74年間生きてきたか、頭ではなく体の中で感じてほしい」と力を込めた。

 同会共同代表の1人で被爆者の朝長万左男・日赤長崎原爆病院名誉院長は「被爆者はいまだに原爆で殺されている。(写真集の)一人一人の表情に人生が投影されている」と指摘。被爆者の城臺美彌子(じょうだいみやこ)さんは「体験にじっと耳を澄ましてくれて、語るうちに私は涙を流していた。その写真が載っている。優しく、皆さんの中に入り込んでくれた」と大石さんに感謝を伝えた。

 「長崎の痕」は藤原書店刊、4536円。同会は県内の小中学、高校、大学に贈るため寄付を呼び掛けている。問い合わせは同会事務局(電090.8398.5772)。

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