健康・長寿めざし…弘前大学と国内大手企業、共同研究講座が続々と/大規模な検診データを活用

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弘前大学健康未来イノベーションセンターにある「オープンラボ」。各企業の研究員が集まり、データ解析などをしている=6日午前

 国内大手企業が弘前大学と、共同研究講座を開設するケースが増えている。ヘルスケア事業などの展開を視野に開設された講座は16日現在14。企業が強い関心を示すのは、弘大が2005年度から実施している岩木健康増進プロジェクト(岩木健診)。健康な人の2千以上の検査項目を生かし、新商品やサービス開発につなげたい考えだ。一方、弘大側は、大手の技術力・開発力を、地元産業の活性化に生かす構え。健康長寿社会実現に向けた「ウインウイン」(相互利益)の取り組みが進む中、今後、具体的にどんな商品・サービスが生み出されるのか注目されている。

 6月初旬、弘前大学健康未来イノベーションセンターにある「オープンラボ」。大手企業の研究員らがデータ解析に取り組んだり、熱心に打ち合わせをしたりしていた。

 口腔(こうくう)ケアの研究をしている「ライオン」の研究員・森下聡さん(39)は「他企業と一緒に働くことで良い刺激を受ける」と、パソコンを打つ手を止めて語った。

 ライオンが、寄付講座として16年5月に「オーラルヘルスケア学講座」(現在、共同研究講座)を設けたのに続き、同年12月に花王が講座を開設。現在、食品、製薬、生命保険など計14社が弘大と手を結んでいる。企業が投資する金額は年間で総額約3億円。今後も参加企業は増える見込みだ。

 弘大が共同研究を提案し始めた13年、村下公一教授(弘大COI研究推進機構)が首都圏の企業に出向いても、反応は薄かった。しかし、岩木健診で得られた岩木地区住民千人以上の2千項目にわたる膨大な健康データ、生活習慣データに興味を持つ企業が徐々に増え始めた。

 「これは面白いと思った」。ハウス食品研究開発本部の小濱佑介さん(33)は、弘大の取り組みを聞いた17年春のインパクトを振り返る。「何よりも住民との信頼関係が構築されていることが印象的だった」。同社は18年6月に「食と健康科学講座」を開設。今年5月25日から10日間行われた岩木健診で味覚の調査を行った。

 岩木健診の実施は、住民にもメリットがある。05年の第1回から健診を受けている70代女性は「健診のおかげで健康でいられる」。50代女性は「肌の状態や毛髪など、ふつうの健診では調べられない項目もあるので興味深い」と語る。

 村下教授は「共同研究は単なる企業誘致ではない。中央の市場につながっている点が新しい視点。規模は小さいがキラリと光る地元企業と大手企業とを結び付けることで新規事業を創出させたい」と近未来をデザインする。

 弘大のデータが生かされた商品・サービスが実現し、実際に社会で使われることが期待されるが、「腸年齢を推定するサービスなど既に実用化されたものもある。ほかに、各企業の特長を生かしたヘルスケアサービスの開発が数多く見込まれる」(村下教授)という。

 岩木健診のリーダーとしてプロジェクトを引っ張ってきた中路重之特任教授は「健康や人間というテーマは、単純なデータ解析だけでは解けない問題がたくさんある。世の中の全部の機関と連携して味方につけることが重要」と共同研究の意義を強調。「岩木健診の狙いは、認知症や生活習慣病を減らし、医療費を削減すること。最終的な目標は、人生100年時代における健康寿命の延伸、『寿命革命』の実現」と話した。