社説:障害者雇用 数合わせでなく定着を

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 中央省庁の障害者雇用の水増し問題を受け、再発防止策が法制化された。

 今国会で成立した改正障害者雇用促進法は、国の機関や地方自治体への厚生労働省の監督強化が柱で、雇用率への計上方法が不適切な場合、厚労省が勧告できる権限を設けた。

 障害者雇用の旗振り役である行政機関が、40年以上も水増しで法定雇用率を達成しているように見せかけてきた前代未聞の不祥事の反省に立てば、監督権限や確認方法を規定したのは当然だろう。

 問題発覚後、各省庁は不足を満たすため今年末までに計4千人の大量採用を進めているが、早期離職や民間雇用の圧迫など新たなひずみも生まれている。

 数合わせではなく、障害者がやりがいを持ち、働きやすい環境づくりに行政機関が率先して取り組むべきだ。

 水増し問題では、裸眼視力の弱い人ら対象外の職員や退職者も障害者に加えるなど、28の行政機関で計3700人の不適切計上が見つかった。制度を所管する厚労省も見抜けなかった反省から、改正法は障害者手帳の写しなど確認書類を保存することを行政と民間企業の双方に義務付けた。

 不適切な計上には厚労省が是正を勧告できるが、障害者支援団体からは勧告の実効性への疑問も出ている。「身内に甘い」との批判を再び受けぬよう、厳格なチェックと監督に努める必要がある。

 肝心なのは、雇用数を確保するだけでなく、障害者が職場に定着して働き続けられるかだ。

 雇用率達成に向け、28機関が昨年10月から新たに採用した約2500人のうち、厚労省が調査した5月時点で既に16機関の131人が離職していた。

 離職者のほぼ全員が非常勤職員で、実際の仕事内容とのミスマッチも要因のようだ。人数の達成を先行させた弊害ではないのか、丁寧な検証と対応が必要だ。

 また、新規採用者の14%強は、公務員になるため民間企業を辞めた人という。企業で育った人材を吸い取っている現実がある。

 障害者の働く場を広げるには、職場のバリアフリー化とともに、それぞれの障害の特性を踏まえた業務内容や、在宅勤務といった柔軟な働き方を取り入れるなど、きめ細かな支援が必要だ。

 介助があれば働ける人は多く、行政機関は民間の先行例となる就労支援に踏み込み、広めていく役割が求められよう。