自己新へ一歩一歩 聴覚障害の阿部さん、中距離走全国2冠

「娘には続けることの大切さを伝えたい」と語る阿部さん(左から2人目)=藤沢市

 聴覚に障害のある藤沢市の会社員阿部博敏さん(43)が中距離走の記録更新に挑んでいる。6年ほど前から健康づくりのために朝のランニングを始めたことがきっかけで、練習を積めば確実に成果が表れる競走の魅力に引きつけられた。2017年から2年連続で全国障害者スポーツ大会(文部科学省など主催)に参加。昨年10月の福井大会では1500メートルと800メートルの2部門で金メダルに輝いた。阿部さんは「一回りも二回りも成長していけるよう、こつこつと練習を積み重ねていきたい」と意気込んでいる。

 最初に全国障害者スポーツ大会に臨んだ愛媛大会では「プレッシャーや重圧に打ち負かされ、金メダル獲得はならなかった」。しかし、悔しい思いが阿部さんにとって「貴重な経験」となり、「それを糧に練習内容の見直しを始めた」。

 トレーニングに関する情報をインターネットなどを通じて独自に収集。体幹とメンタルを鍛える訓練を取り入れた結果、心肺機能が強化されるなど顕著に成果が表れ、福井大会での2部門金メダルにつながった。

 元来、社会人になってからサーフィンを楽しんでいた程度で、学生時代にもスポーツとは縁がなかったという。しかし、折からのランニングブームもあり、健康維持、増進のため週3回の早朝ランニングを始めた。

 当初は走りだすとすぐに息が切れ、「歩きたくなる自分に負けそうになることが多々あった」。しかし、継続するうちに、走ることの気持ち良さを満喫できるように。走る楽しみが記録更新への挑戦に高進したのは、友人の紹介で全国障害者スポーツ大会の存在を知ったことがきっかけだった。

 日々の鍛錬による優れた功績は、藤沢市生涯学習特別貢献表彰の対象となり、5月24日、鈴木恒夫市長から表彰状を受けた。妻と娘2人、家族そろって表彰式に出席した阿部さんは「金メダル獲得は、練習の成果を本番で発揮できたからこそとの気持ちが大きかった。しかし、今は自分一人の力ではなく、家族をはじめ、友人、コーチ、チームみんなの後押しがあってこそと思うようになった」と振り返った。

 「継続は力なり」。阿部さんは次回大会へ向け、自己ベストの更新を目標に掲げる。

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