大山のふもと、比々多の魅力PR 伊勢原市が誘客へ新事業

比々多地区の観光プロモーション動画の一場面(伊勢原市提供)

 神奈川県伊勢原市は、霊山として信仰される大山の麓にあり、文化財などの名所が散らばる同市比々多地区の誘客に力を入れている。PR動画を制作したほか、同地区の散策を手助けするガイドマップ付きの総合案内板や解説板、方向案内板を設置。訪日外国人ら向けに英語表記も付けた。いずれも国の補助金を活用した事業で、市は「歴史ある場所が多い地区の魅力を知ってほしい」としている。

 一連の誘客事業は、2016年の「大山詣(まい)り」の日本遺産認定を追い風に、市と市内にある寺社や市文化財保護審議会などで構成する「伊勢原市歴史文化を活(い)かした地域づくり協議会」が進めた。

 動画は大手映像制作のポニーキャニオン(東京)に委託。文化庁の「地域文化財総合活用推進事業」の補助金を活用した。

 タイトルは「いいな比々多 日本遺産・大山のふもとへ、それぞれのスタイルでショートトリップ」。ミカン狩りや県立いせはら塔の山緑地公園でピクニックを楽しむ家族と、三之宮比々多神社や聖峰(ひじりみね)の眺望を撮影する女性カメラマンの両者が名所を巡りながら交差する物語に仕立てた。

 三之宮郷土博物館や保国寺、吉川醸造の様子も紹介し、比々多の魅力を伝えている。ロング(約5分)、メイン(約3分)、CM(約30秒)の3バージョンを用意した。

 一方、比々多神社の駐車場には、地区全体の地図を載せた縦90センチ、横幅1.4メートルの広域の案内板を設置。市指定文化財の齋藤家住宅や聖峰不動尊、保国寺など名所6カ所の写真も組み合わせている。6月中に六つのQRコードをスマートフォンなどの携帯端末で読み取ると、神社や寺の詳しい説明を見ることができるようにもする。

 また、同地区に建立された「連歌中興の祖」と呼ばれる連歌師心敬(しんけい)の顕彰碑「心敬塚」には心敬の功績、能満寺には寺の歴史を記した解説板二つを設けた。分岐や交差点の多い同地区に合わせて、計14カ所に名所の位置を記した方向案内板を立てた。いずれも観光に訪れる外国人らに向けて、英語でも表記している。

 動画は4月から、市公式ホームページ「いせはら文化財サイト」や動画投稿サイト「YouTube」で公開。メインバージョンの視聴回数は7万回に上っており、反応は上々だ。市教委教育総務課は「比々多地区は古くからのものを守る意識が高い」とし、「多くの人に周遊してもらい、文化財について知ってほしい」と活用を呼び掛けている。

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