揺らぐ「安心の要」

 今春、ブラジル政府は「日本式」を取り入れることにした。日本から海外に渡った文物は数あるが、その中には地域に密着した「交番」や警察官の「巡回連絡」がある。国内の一部には日本伝来の交番が前から存在するが、それを全国に広めるのだという▲交番制度は治安維持に「効果大」とされ、海外のお手本でもある。夜、明かりのついた近所の交番を見掛け、どことなく安心した覚えのある人も多いだろう▲その「安心の要」が揺らぐ気がするからか、「交番また標的に」の報に胸がざわつく。大阪府吹田市で交番の巡査(26)が刺され、拳銃を奪われた事件で、男(33)が25時間の逃走の後、強盗殺人未遂の疑いで逮捕された▲逃走の間、吹田市やその周りに住む人々は眠れない夜を過ごしたに違いない。不安と恐怖は察するに余りある▲警察官から拳銃を奪う事件が相次ぐ。巡査の拳銃入れは旧式で、銃が奪われにくい新型の配備を進めるさなかに吹田の事件は起きたという。再発防止に策を尽くすことは「安心の要」を取り戻すことでもある▲そう考えた後で、交番は拾い物を届けたり、道を案内してもらったりと、地域に開かれた存在でもあることを思い起こす。人を寄せ付けない「とりで」にするわけにもいくまい。これからの「日本式」は見定めが難しい。(徹)

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