歴史的役割 明らかに 昭和女子大 被爆者運動を研究 被団協の資料活用

被爆者運動の歴史を研究している(右から)印出さん、吉村さん、松田准教授=東京都、昭和女子大

 昭和女子大(東京)の学生が、日本原水爆被害者団体協議会(被団協、東京)が所有する大量の資料を活用して被爆者運動の歴史研究に取り組んでいる。被爆者運動が戦後日本の「反核・平和」意識の形成に果たした歴史的な役割を明らかにし、戦後史の中に明確に位置付けたい考えだ。

 同大の松田忍准教授(43)は「被爆者運動を通して日本人に『反核・平和』の意識が根付いたとすれば、当然研究すべきテーマだ。戦後史の中に運動史を明確に位置付けたい」と研究の狙いを話す。

 松田准教授は有志の学生を募り、昨年6月に「戦後史史料を後世に伝えるプロジェクト」を開始した。活動は週1回。昨年度は12人の学生が参加し、6人の被爆者を研究対象にして、資料や聞き取りを通して被爆者運動に身を投じた経緯や思いなどを追った。

 研究資料として活用したのは、主に被団協が所蔵し、認定NPO法人「ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会」(東京)に管理を委託している被爆者の手記や写真、新聞記事など約6千点。

 昨年度の研究成果は11月の文化祭で企画展「被爆者に『なる』」として発表した。この中で、長崎の中川町で被爆した元連合通信社記者の吉田一人さん(87)の体験を紹介。吉田さんは取材した被爆者から被爆者健康手帳を取得するように勧められた。取得後に被爆者団体「東友(とうゆう)会」を設立し被爆者運動に関わるようになり、後に被団協の事務局次長も務めた。

 人間文化学部4年の吉村知華さん(22)は「被爆者一人一人が何を思い、運動するようになったのか、その人になりきるつもりで研究した。原爆は今も続いている問題という意識を持てた」と成果を語る。

 長崎で被爆した木戸季市被団協事務局長(87)は「学生たちは被爆者と一体化するぐらい熱心に研究している」と高く評価。研究が核兵器廃絶への機運醸成につながることに期待を寄せる。

 本年度の研究には13人の学生が参加。研究の主眼を「個人」から「集団」に移し、被爆者運動の歴史を追う予定だ。長崎と広島で原爆資料館などを視察するほか、被爆者の足跡をたどるフィールドワークを検討している。研究プロジェクトは4年計画で、最終的な成果は2021年度に学内の博物館で開く企画展で発表する予定だ。

 同学部2年の印出也美さん(19)は「一人一人の被爆者が集団としてまとまっていく過程を明らかにしたい」と意気込んでいる。

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