妊娠中は適度な運動が必要?妊婦さんにおすすめの運動とは?【医師監修】

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【医師監修】この記事では妊娠中の運動について、医師監修のもと解説します。妊婦さんに適している運動は、ウォーキング、水泳、エアロビクス(マタニティービクス)ですが、妊娠中に運動する時間を確保できない、妊娠前から運動習慣がない、運動が苦手という妊婦さんもいることでしょう。そこで、おすすめの運動は歩くことです。

今回は、妊娠中に気軽に始められる散歩やウォーキングについてお話しします。

妊婦さんにおすすめの運動は?

妊娠中に適度な運動をおこなうことは、心肺機能や筋力、体力の維持ができるため、妊娠中を快適に過ごすことに役立てることができます。また、妊娠中から体力を養うことで、出産を乗り越え、産後の赤ちゃんのいる生活に疲れにくい体を準備することができます。

妊娠12週以降で正常な妊娠経過であること、妊婦健診で医師、助産師から運動を禁止されていなければ、運動をしても大丈夫です。妊娠中の運動については、医師や助産師、運動指導をするトレーナーから専門的な指導と助言を受けましょう。特に高血圧、糖尿病、肥満などの妊娠中の合併症の予防と治療を目的とする運動については、自己判断で進めず、主治医と相談して十分に注意しておこないましょう。

妊娠中におこなう運動は、母子にとって安全で、全身運動かつ有酸素運動で楽しく継続できるものが適しています。有酸素運動とは、酸素を使い、筋肉を動かすエネルギー源である脂肪を燃焼させる運動で、過剰な体重増加の予防を期待できます。妊婦さんに適している有酸素運動は、ウォーキング、水泳、エアロビクス(マタニティービクス)ですが、妊娠中に運動する時間を確保できない、妊娠前から運動習慣がない、運動が苦手という妊婦さんもいることでしょう。

そこで、おすすめの運動は歩くことです。妊娠中のライフスタイルの変化に合わせて取り入れやすい運動ですので、散歩やウォーキングなど歩くことを意識しましょう。

妊娠中の運動には散歩やウォーキングなど歩くことがおすすめ!

歩いて移動するときや散歩に出かけるときに、歩くことをウォーキングとして意識するだけでも、妊婦さんに適した運動になります。ウォーキングするときは以下の点を参考にしてください。

・ウォーキング開始前の確認
妊婦さん本人の体調が優れない、あるいはおなかが張っていると感じたら無理に歩くことはやめましょう。天候や季節によっては、屋外にこだわらず、ショッピングモール内など屋内を歩いても良いでしょう。

・ウォーキングのための準備
歩きやすい服装や靴を着用しましょう。妊娠中は足がむくみやすいので、多少サイズを調整できるタイプの靴が良いでしょう。転んだときに両手が使えるように、母子健康手帳、保険証、タオル、水分補給用の飲み物などはリュックに入れて持ち歩きましょう。

・ウォーキング前後のストレッチ
運動効果を上げてけがを防ぐために、ウォーキング前にストレッチをして体を慣らしましょう。ウォーキング中は急な動きはしないで、ペースを上げるときも、落とすときも、徐々におこないましょう。ウォーキング後にもストレッチをして、筋肉をほぐしましょう。

①ふくらはぎのストレッチ:

手を壁や椅子などにおいて体を支える。足を前後に開いて、後ろ足のかかとは床につけたまま、体重を前にかけて、後ろ足のふくらはぎを伸ばす。

②太もも(後面)のストレッチ:

足を前後に開き、両膝を軽く曲げて、腰を後ろに引いて、前側の足の太ももの後面を伸ばす。

③太もも(前面)のストレッチ:

手を壁や椅子などにおいて体を支える。片足に体重をのせてバランスをとり、反対側のつま先をもって、おしりの方へ引き寄せ、太もも前面を伸ばす。

・ウォーキングは楽しみながら続ける
運動は楽しく継続することが大切です。妊娠前から運動習慣がない、運動が苦手という妊婦さんの場合は、週1回のペースから開始して、週2~3回を限度にしても良いです。もともと運動習慣があった妊婦さんは、妊娠経過が順調であれば毎日ウォーキングしてもかまいません。

1回の運動時間は心地よいと思える範囲から開始して、無理のない程度に徐々に増やしましょう。有酸素運動として効果が表れるのは20~30分間続けることが必要ですが、妊娠中の運動は長くても60分以内を目安にすることが望ましいです。普段の歩き方よりも速めに、歩幅は大きめを心がけましょう。歩き始めは人と会話できる程度からスタートして、最後の5~10分はクールダウンするつもりで徐々にスピードを落として終了しましょう。慣れてきたら1日数回おこなうのも良いでしょう。

・ウォーキング中の事故に要注意
音楽などを聴きたい、通話しながら歩きたいという妊婦さんもいるかと思いますが、音楽や通話、端末機器の操作に気をとられると、周囲への注意力が低下します。妊娠中は体型の変化によってバランスが不安定になり、瞬発的な動きが鈍くなることから、他の歩行者や自転車と接触しそうになっても避けられず、転倒したり、おなかをぶつけたりする可能性があります。

自分と赤ちゃんを思わぬケガや事故から守るために、ウォーキング中はイヤホンやヘッドホンの装着やスマートフォンなどの端末機器の操作はやめましょう。

妊娠中にたくさん歩かないと安産できないの?

時に、「たくさん歩かないと安産できない」「安産のために1日1万歩は歩きましょう」という助言する医師や助産師がいます。また、書籍や雑誌、webの情報に「毎日〇万歩歩いたおかげで安産だった」「毎日〇時間散歩したら安産だった」というような個人的な体験が綴られていることもあります。このような助言や情報を見聞きすると、歩けば歩くほど安産に近づくと受け取ってしまいますが、歩いた距離や歩数が安産と必ず関連しているという科学的根拠は今のところありません。

そもそも、安産や難産という言葉は医学用語ではなく、明確な定義がありません。医師や助産師も、出産を前向きにイメージしてほしいという気持ちから安産という言葉を用いることはありますが、安産か難産かについては、出産を終えたママの気持ち次第で決まることです。「安産のために!」と1日何時間も、何万歩も歩くことだけに時間を費やして、体力を消耗したら意味がありません。しかし、出産には体力が必要ですので、満足のいくお産のために、妊娠中に運動をして、筋力や体力を維持することはとても大切です。

妊娠中の散歩やウォーキングは、歩数や距離を稼ぐことにこだわらず、1回当たりの時間や1週間に行うペースに気をつけて、楽しみながら続けましょう。

まとめ

妊娠中は、切迫早産などの診断を受けず、体調が万全な状態であれば、体力づくりと気分転換を兼ねて、日常生活に無理のない程度に歩くことを習慣にしましょう。ただし、妊婦であることを自覚し、安全面にも注意する必要があります。散歩やウォーキングをした後、体調に変化が起きたとき、胎動がいつもより少ないとき、転倒したときなどは、自己判断で経過をみず、必ずかかりつけの産婦人科へ相談・受診するようにしましょう。

■参考文献
・日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン産科編2017」
・日本臨床スポーツ医学会「妊婦スポーツの安全管理基準(日本臨床スポーツ医学会誌 Vol. 13 Suppl., 2005)」
・『マタニティ・エクササイズ・マニュアル(2010年初版)』(監修:進 純郎/発行:社団法人全国保健センター連合会)
・『マタニティ・エクササイズ・マニュアル』(監修:藤田麻里/発行:社団法人全国保健センター連合会)


監修者:医師 おおたレディースクリニック院長 太田 篤之 先生

順天堂大学卒後、派遣病院勤務を経て、平成22年より順天堂静岡病院周産期センター准教授就任。退職後、平成24年8月より祖父の代から続いている「おおたレディースクリニック」院長に就任し現在に至る。


著者:助産師 古谷真紀

一般社団法人産前産後ケア推進協会プロジェクトリーダー

大学病院勤務を経て、2015年より現職。妊娠中や産後の女性のココロとカラダの相談、ママパパ&赤ちゃんのちょっと気になるコトに日々応えています。