19年現在女子6人グループの5thアルバム。デビュー当時は、元気が取り柄で人気を博したが、今では“MUSIC”だけでも十分勝負ができる。
全12曲、多彩な楽曲群を歌いこなすことにまず驚く。なにしろ、岡崎体育提供のヒップホップ調からEDMへと複雑に曲調が変わる『Family Complex』も、キラキラなアイドル風のポップソング『明日もきっと70点』も、そして吉澤嘉代子提供で女子の退屈な1日を描いた『曇天』も、6人全員が高水準に聞かせるのだから。
特に、後半6曲の構成が見事。爽快なスポーツ系エールソングの『BUZZER BEATER』は、90年代のSPEEDあたりを想起するほど真っ直ぐだし、ドリーミーなスローバラードの『星の数え方』は、かつての正統派ソロアイドルのように美しい。先輩・ももいろクローバーZとのコラボ曲『COLOR』は、TV映えする明るい声のももクロとの対比で、エビ中としての誠実さが見て取れる。そして、パワフルな要素とリズミカルな要素を上手く取り込んだのがMrs.GREEN APPLEの大森元貴が書き下ろした『シンガロン・シンガソン』。今の6人の実力がよく分かる。
あえて綺麗にまとめず、宮藤官九郎作詞でコント入りの『元気しかない!』でハチャメチャに終わるのも、続きが感じられて良い。本作を聴けば、日常においても先入観を超える勇気がもらえるはず。
(SME・通常盤 2778円+税)=臼井孝