<大ヒット盤> aiko『aikoの詩。』 時間の経過を感じさせない歌声

aiko『aikoの詩。』

 38枚のシングルの表題曲全42曲と、カップリングから14曲をセレクトした初のシングル集。1曲単価は60円台と激安で、本人が組み直した曲順も含めCDで聴いてほしいという意図が伝わる。

 3枚の表題曲集は、Disc.1が『花火』『ストロー』などポップで元気な楽曲が多めで、Disc.2が『桜の時』『ボーイフレンド』などミディアムな楽曲も増え、そしてDisc.3が『ナキ・ムシ』『カブトムシ』などスローな楽曲が目立つが、それぞれ単調にならぬよう工夫されている。曲順が発売日順じゃなくても違和感がないのは、ピュアな恋愛をテーマにした歌詞、季節感を大事にしたキーワードやサウンド、そして張った高音から拗ねたような低音まで若々しい歌声を、20年以上保っているからだと感心した。

 カップリング集のDisc.4も秀逸。将来に希望を託した『未来を拾いに』や、「あなたがついた嘘」と「知らないフリ」の狭間で揺れる『Do you think about me?』、後戻りできない秘密の夜に包まれる『ココア』など、表題曲以上に、感情の機微に気付かされる。アルバムまで待たずにシングルを買うファンが多いのも納得だ。

 パステルカラーのデザインや恋する表情を切り取ったような写真を散りばめた歌詞集も良い。本作を楽しめれば、恋も仕事も初心を想い出せるはず。

(ポニーキャニオン・4CD通常盤3500円+税)=臼井孝

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